皆様さようなら
宙吊りになるイルカを見送り水槽から移される魚達に別れを告げ、小さな水族館の改装が始まることになりました
ここに展示されていた生き物たちは、一時的に他の水族館で預かられるそうです
みんなトラックに積まれて搬送されるそうです
個体によっては車の揺れで体調を崩してしまう子を居るそうなので心配です。
魚やイルカ達も車酔いや船酔いがあるそうですしね
ここの飼育員の皆さんとても良い人で、この作業が終わればお役御免になるだなんてとてもじゃないけど言えません
ニコニコと丁寧に運ばれる魚達の説明をして下さる度に心がズッキンズッキン痛みます…あぁ、悪いのは全てクジラですよ
その頃イサナさんはと言うと、やっぱり海で待機しています
ただ、人の出入りが激しいので水中に身を潜めているようですが
そーいえば、どうして突然従業員をクビにするとイサナさんは言ったのでしょう?
出来れば私がお役御免したいところでありますが…ごほごほ
わざわざ挨拶をし今後の理想を語り聞かせたのは、これから行わなければならない事に彼らが必要であったからだと思いますし、別の人手があるのならすでに皆様新たな就職場所を探しているでしょう
しかし彼らはまだ魚達の搬送につき合っています
クジラの考えなんて読めません
が、潰されたくなければ彼の言うことを黙って聞いて従っていればいいのです
今思えば、陸の奥地に逃げれば鯨は追いかけてこれなかった気がします!
まぁ何だかんだで良いお給料が貰えそうなので…げふんごふん
皆様には悪いですが、改装され世界一有名(になる予定の)水族館に強制的であるとはいえ住み込みで働けるのは楽しみなわけでして
理由がどうであれエンターテイメント溢れる水族館に期待は膨らみます
館長が世界最大の哺乳類でなければさらに素敵だったでしょうけれどね(あぁこの場合、世界最大の「肉食」の哺乳類ですね)
イルカと数人のスタッフを乗せ、走っていくトラックを見送ります
強制労働はまことに不本意ではありますが、彼らが帰ってくる頃にはこの寂れた水族館は新たなテーマパークとして生まれ変わり賑わうのだと思います
一仕事終えて(見ていただけですが…)例のごとく水族館の裏に回ります
今日の作業はとりあえず終わりとのことです
「イサナさーん!あと一週間ほどすればみんな移せるそうですっ」
「そうか」
「魚達を移す間と、改装中は私やること無いですよねー?」
その間家に帰っていても良いですか?と海を割る黒い巨体に問います
巨大なお目目をぐりんとこちらを向けて、彼は大きくため息を付きました
「ナガレ、お前には俺に代わり、改装の細かな指示を出してもらう」
まだまだ仕事はある。と鯨は呆れたように言いました
海にぷかぷかしてるだけの良いご身分でげふんごふん
文句なんてありませんよだからそんな大きな目で射殺さんばかりに見ないで下さい館長…
「改装中はどこに住めばいいんですか…」
思わず出た言葉に、自分で考えろと彼は冷たく言い放ってくれました
「…イサナさんの展示室でも作ってもらいましょうかねっ!」
鯨を展示してたらさぞかし人気になるでしょうね!と言い返してやると口をつぐんで不満そうにしてました
ざまぁ!
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[mokuji]
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