レモンキャンディー

毛足の長い高そうな赤色の絨毯を踏みしめ、長い廊下を進む

この先しばらくは額縁の中の女達も無個性もマネキンの首もいない

少し気持ちの悪い奴等はいるが、薔薇を欲しがる子達は居なかったはずだ

少し前に出会った少女と男…イヴとギャリーは、薄暗い館内を自分に続いて不安そうに歩く

彼らはこの美術館に迷い込み、出口を探してる途中に色々な目に逢ったんだそう。

すでに疲労困憊していたのか、もとより言葉の少ないイヴが俯いて黙り込んでしまっていた

少し急ぎすぎたか

「イヴ、大丈夫?」

屈み込んで顔を覗き込み尋ねると、力のない頷きが返ってきた

大丈夫じゃなさそうなんだけど

この辺に今すぐ襲ってくる奴はいないが、安全な部屋まで早く連れて行こうとしたのは失敗だったらしい

どうしたものかと立ち上がると、ギャリーが手を差し出してきた

見ると、掌に何か丸いものがある

「ナガレ、貴方こそ大丈夫?疲れた顔してるじゃない」

ほら、と自分の手に転がってきた小さなもの

「…何これ」

「レモンキャンディーよ」

オススメなの。疲れたときは甘いものね!とギャリーはポケットを探る

同じものがいくつか出てきた

「はい、イヴにもあげるわ」

コロンと転がったそれをイヴも受け取る

同じものが3人の手の中にあると考えると、なんだか不思議な感覚だった

「……。」

「……。」

「なぁに?」

2人とも食べないの?とギャリーが首を傾げる

イヴは自分を見上げていた

自分だけ食べるのは悪いと思ったのだろうか

「…食べよっか」

声をかけると、透明のフィルムを外し、口の中に入れていた

自分も同じようにして口内にそれを入れる

甘くて酸っぱいものが広がった

イヴの片方だけ膨らんだ頬を触りつつ

「ねぇ、ギャリー。」

とニコニコしていた男に声をかける

きょとんとしたギャリーはすぐに微笑んで首を傾げた

「あら、なに?ナガレ」

「2人だけでも、出られるといいね」

何言ってんのよ。と少しだけ微笑みを崩し怒ったように腰に手を当てる

「一緒にここから出るのよ、イヴと私と」

ナガレとね。と当然のように続いたそれに、イヴがこくこくと首を縦に振っていた

「…出れると良いなぁ」

「大丈夫よ」

ギャリーもレモンキャンディーを口に入れる。おそらく3人とも同じ味を噛みしめているんだろう

少し小さくなってしまった飴がやけに寂しい

「そーいや、あいつは今頃どうしてるかな」

気が付けば、思わずそう呟いていた

「あら、ナガレの友達?」

妹みたいなもん。と答えるとまた会えると良いわねとギャリーは優しく笑ってくれた

イヴと顔を合わせて微笑み合う2人を見ながら、舌先で飴を転がしてみる

また小さくなっていた

どのように選択したとして、バッドエンドしか無いとしても、2人だけはここから出させてあげるつもりだ

どんな手を使っても。例え自分が出られなくても。

レモンキャンディーを噛むと、ガリリと音がして物質がなくなる

酸っぱさだけが口内に残った



☆☆☆
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ギャリー姉のせいでオネェブームが去らない

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