調教未満
バチンッと軽くしなったそれが床を弾いて音を立てると、まるで凍えるように小さく震えて身を丸めた
すっかり怯えてしまったらしいナガレを、実際に僕が鞭で叩いたことはない
ただ、何となく気に入って買ったこれ…乗馬鞭が恐いのか、僕の挙動の度に窺う顔が可愛くて持っているだけだ
「これ、恐い?」
「……」
僕が腹部に馬乗りになっているから動けない彼女は、自らを守るように重ねていた腕の隙間から僕を不安そうに見上げただけだった
もう一度右手を振り上げる
「お返事は?」
「……っ!」
バチンッとナガレの顔の真横を、しなったそれが勢い良く叩く
ナガレの耳には、鞭が風を切る音まで聞こえたんじゃないだろうか
小さく小さく息を飲んで、自らの側にある鞭と僕を交互に見ている
瞳を潤ませて、怯えて声も出ないらしく必死に請うようにパクパクと口の開閉を繰り返すのが堪らなく愛おしかった
「エメ、エメットさん…」
「ごめんね、ナガレ。君が泣きそうな顔って凄いそそる」
文字通り食べちゃいたい
堪えきれずに零れた涙を身を屈めて舐めとって、そのついでに彼女の白い首筋にも舌を這わせる
時折わざと甘噛みしたり喉を圧迫してみたりするたびに、びくりと細い体が震える
捕食者にでもなったみたいで、すごく気分がいい
「僕のこと、恐くなった?」
鞭をちらつかせながらそう聞くと、勢い良く首を左右に振ってた
そんなに怯えなくても、叩いたり怪我させたりなんてするつもりはないのに
傷を作って喜ぶ趣味はないし、さすがに可哀想だしね
「でも、なんだかんだでナガレは意地悪されるのも好きだよねー?」
鞭を床に置く
彼女の上から移動して小さな体を抱き起こし、服の下に手を忍び込ませると先程とは違う意味で震えていた
下腹部を撫でてゆっくりとその先に指を入れると、くちゅりと音を立てる
そこはすでに水気を多く含み、指を動かす度に卑猥に鳴った
怯えも恐怖も、あっという間に薄れてしまったらしい
「案外、思いっ切り叩いても喜んじゃったりしてね」
快楽に甘い声を上げ始めた彼女には、もう聞こえていないようだった
☆☆☆
アウトー!デデーン!
「エメット、乗馬鞭など持ち出して…あなたの悪趣味にはついて行けません」
「インゴこそ土下座に足ぺろはどーなの?」
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[mokuji]
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