露骨を食む

女王主義の続き
ハイエナ♂主がんばるの巻



 
大上は仲の良いハイエナ…ハルトの恋の行方をこっそりと応援していた

大々的でないのは、あまり騒ぐと園長やその他動物達が変な横槍を入れるといけないからだ…恋愛など誰もまともにしたことがない癖に首を突っ込みたがるから困る

園長が連れてきて最初、「こいつはハルトだ。ちなみに♂じゃ」とわざわざ性別を述べたほど中性的な見た目をしている彼は、そのせいで嫌な思いをしてきたらしい

現に♀と間違えて声をかけたあの馬鹿でかい体格のポポを一瞬で池に叩き落とした程だ。見た目の割に野生では狩りを得意としていたらしい

ちなみに、その後に追い討ちで脳天にかかと落としをかましに行ったくらいには腹が立ったようだ

付き合っていく内にわかったことだが、ハイエナの彼は自分の見た目に関すること以外は基本的に無頓着だ

種族柄もあるのか、飯を何日も食べずに寝ていたり、周りが騒がしく遊び回っていてもちらりとあきれた視線を寄越すだけでぴくりとも動かない

が、やはりというか何というか、シシドのやんちゃ具合には手を焼いたようで、首根っこ掴んでイガラシのプールに沈めようとしたのを止めたのは記憶に新しい

そんなハルトが違う種族でサーカス組とは言え、一匹の♀に執着しているというのだ

初めはウワバミや福本が近付くだけで

「フヒヒ…悪いが種族柄♀は苦手なんだよ…」

と尻尾を丸めた彼が、である

「ただ、お前はもっと大人しい奴を好みそうだけどなー」

大上は、隣で骨をかじるハルトを横目に、自らに配当された肉を頬張りながら呟いた

ハルトは食事時くらいのんびりしたいと大上の檻を訪れることが多い…どっかのバカネコが襲撃に来るんだとか

大上の呟きを拾ったのだろう、ハルトの丸い耳がピクリと動いた

飼育員の華から貰ったという犬用の骨から口を離しいつもの笑いを零すハイエナは、片手で自らのタテガミをいじりながら

「フヒヒ、きゃんきゃん可愛いじゃねーか」

と表情を緩めた

それが普段の何事にも無頓着で飄々とした印象を薄れさせ、こいつも♂なんだなと大上はどこか納得する

「可愛いか?あいつウルサいだけだろ」

「喧しいのは否定しねーな。」

鈴木鈴木言いやがる。と途端に不機嫌そうに声を低くした解りやすい友人に、流石にいやそこじゃねーよとつっこみを入れるほど大上は空気が読めない♂ではなかった

あのうるさい犬は、俺達が園長を慕うような感情で鈴木とやらを好きなだけではないのだろうかと思いはすれど、恐らくハルトは納得しないだろうと口を閉ざす

グルグル呻りながら恨めしそうに骨を噛み始めた友人は、別に想いを募らせる相手…トイトイが慕っている、鈴木という男に対し敵意を持っているわけではない

ハイエナは狩りは技術よりも執念深さで成功させると言っても良い

執拗に追い回し相手が諦めるまで諦めないのが彼らの狩りだ

種族柄だけで言えば、鈴木を抹消してでもトイトイを手に入れるという強硬手段に出ているだろうが、それをしないということは嫌悪どころか好意を持っていることの証明であろう

だからこそ余計に厄介なんだろうと大上はため息を付く代わりに

「華ちゃんがいっつも心配してたぞ」

と話を変える

ハルトは華ちゃんが?としばらく首を傾げ思案していたが答えがでないらしい

「あいつがお前のタテガミ掴んで馬乗りになったりバカバカ言ったりしてるからじゃねーの?」

残った肉を口に放り込み、指先を舐めながら大上はそう告げた

ハルトはその様子を見ながら、口内で咀嚼していた骨を飲み込む

「俺は女には手をださねぇのよ…まぁ、ハイエナは共食いもするような種族だからなぁ…」

「……」

「…大上、食わねぇから落ち着けよ」

肉食動物でありながらわりと臆病な大上が口を閉ざして僅かに身を引いたのに気が付いたらしいハイエナは、小さくフヒヒと笑う

「野生でも滅多に共食いはしないんだ、飯を貰う立場の今、わざわざ不味いもん食わねぇよ」

先程から骨を軽々と噛み砕いていた牙を見せながらのその台詞は、大上の中に少し芽生えた恐怖を拭えなかったらしく、大上は小さく肩をすくめた

…これは、美味しければ食べるというニュアンスを含ませたハルトが悪い。

僅かながら不満そうな様子を見せたハルトを無視し、大上は先程から近付いてくる匂いを確かめるように鼻を上げる

角を曲がって現れたピンクのモコモコした塊が、こちらをめがけて近付いて来ていた

「あ、あいつ来たぞ」

「おー、また何かしらの練習かよ」

面倒臭そうにため息を付いて、自らの膝に手を付き立ち上がるハイエナ…しかしながら彼の表情は言葉に対して穏やかで、大上は自らの口の端を持ち上げる

「にやけてんぞ」

「フヒヒヒ、生まれつきだ」

「何話してるのハルト、早く行くよハルト!」

檻まで来たトイトイは、ハルトを見つけると早速ショーの練習に行くんだからと息巻いてまくし立てる

「喧しいなぁ、トイトイは」

そうぐしゃりと自らの下にある頭を乱暴に撫でる彼は満更でもなさそうに目を細める

トイトイはそんな様子に少し頬を膨らませ、ハルトのタテガミを引っ張りサーカスのテントに連れて行く

案外変化に気が付いてないのはお互い様なのかと、大上は檻から離れていく2人を見送った



☆☆☆
そしてトイトイがあまり出てないのおかしいと思うの鈴木!←
こーゆー目線は疲れる…


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