捕食る(補食る)

☆あてんしょん
・微暴力
・たぶんエロ未満…?
……OK?




強化ガラスを背に逃げ場のない私の両脇に手をついて迫る巨体は、アイパッチに隠れた目を細めて捕食者の顔で笑っていた

その際にカパリと開けられた大口に頭から飲み込まれてしまわないかと身を縮込めると、その笑みをさらに深くしたようだった

綺麗に均等に並んだ鋭い牙は、噛まれれば痛いだろうなーでは確実に足りないだろう

こんな恐怖を具現化したような彼に迫られるだなんて、一体私が何をしたというのだろうか

「…あ、あの…」

私の吐いた声は気泡として水面へ向かっただけだった

声を聞き取ろうとしてか距離を詰められる…その際に目の前に迫ってきた真っ白な牙は確実に私を食い殺そうとしているに違いない

私達の種族に共食いの習性は無いはずだし本人にはそんなつもりは無いのかも知れないが、少なくとも私にはそう感じられた

別に首を絞められているでもないのに呼吸が荒くなって、危機感からか目を逸らすことも出来ない

本当に、私が何をしたというのか

ついこの前まで居た水族館に帰りたい

いきなりこの水族館に連れてこられて、訳も分からぬまま子をなさなければダメだと言われたのだ

この野生で一人で暮らしてきた大きな雄と…トラジエントだなんてずっと水族館で暮らしてきた私が関わるはずもなかった個体の雄と子を作るなんて無理だ

体の大きさだって気性だって大きく違うし、出会って一週間と経っていない

しかし、ここのリーダーが決めたことは絶対であると、彼は言った

「…あの、あの…本気なんですか…?」

「何がだ?」

「……」

彼が大きな目をゆっくりと開く

四つの目で見つめられ、まるでクリック音でも当てられたように体が硬直する

あぁ、ダメだ…辛うじて吸い込んだ息が喉元を塞いで窒息してしまいそう

逃げ場を探したくとも、すべての意識を奪われてしまっている

何を思ったのか徐に伸ばされた彼の舌が目の前に迫り、首筋をなぞる

背筋を虫が這い回るかのような感覚が走る

時折悪戯に牙が喉元にふれ、生きた心地がしない

いっそうのこと食いちぎられれば楽になれるのではないだろうか

海水では無いもので、視界が歪んでいく

両腕が自由なのに関わらず抵抗を一切出来ない私に満足そうに目を細め

「それでいい、ナガレ」

と彼は呟くように言った

「お前に逃げ場はない。諦めるんだな」

伸ばされた大きな手のひらが、首もとを掴んだ…最初は触れているだけだったが、指が少しずつ食い込んでくる

「あ、あ、」

少しずつ少しずつ、まるで押しつぶそうとするかのように体重を掛けられ圧迫感が増していく

彼の手を苦し紛れに掴んだがびくともしない

開けた口から呻き声が泡として昇っていくだけ

「ナガレ、お前が子を産まねば、お前も俺もただでは済まないだろう…」

まるで餌でも見つめるような哀れんだ目が加虐的に歪む

「それがいやなら、でら根性で孕むんだな」

ぱっと瞬時に離れた手からずるずるとガラスを伝い落ちていく

多い被さる陰から逃げる気力は一切残されていなかった


☆☆☆
名古屋港水族館行った記念にサカマタさん夢いってみたぜ!

瀕死になると生き物はエッチしたくなるらしいぉ!←
まぁ、サカマタさんはたぶん
そこまで考えてない


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