破壊神が通る

最初は適度に遊べる玩具があればよかった

面白く、派手にブチ撒けられればよかった

それも間違いなく本音だったはずなんだ

「こんにちはーえいっ」

背後から忍びより、勢いよく手を振り下ろす

振り返ろうとした後頭部が派手に弾け飛んだ

力の抜けた手から袋が滑り落ちカシャン音を立てたが、膝は折れずしっかりと地面を踏みしめていた

当たり前だ。これくらいでこの人は死にはしない。だからこそ壊すのだから

怪人も最近は簡単に壊れてつまらない

「きゃっはー!今日も素敵なはじけ具合ですね!ゾンビマンさん!」

街中で買い物途中だったゾンビマンさんを襲ったからか、一気にあたりが騒がしくなる

ヒーローが目の前で弾け飛んだら、だれだってビックリするかもしれない

自分は人間型のサイボーグだし、武器はすべて体内に収納しているから、見た目での判断は当てにならない

誰かがヒーローを呼ぼうと叫んだのを皮切りに、子供を抱えて逃げていく女や携帯の動画を起動させる奴、へたり込む金髪と様々なアクションを起こし始める

あれ、あの金髪何処かで見たことあるんだけど…うーん。

必死に考えてる私の前に、時間稼ぎをする為にか弱小ヒーローが躍り出てくる。がんばれーとか声援が聞こえた

私、怪人じゃないんだけどなー

やだなぁ、別に雑魚には興味ないのに。てか、私のこと知らないのな

自転車を投げてきたので片手で受け止めて返してあげたら気を失ってた。弱い

「またお前か…ナガレ…」

首から巻き戻しのように再生を始めていて、ようやく鼻の下まで治ったらしい

少し苦しそうに喉にたまった血反吐を吐き出し、掠れながらも出された声に嬉しくなった

「覚えててくれたんですね、ゾンビマンさん!」

鼓膜も再生され声を拾ったのか、はぁ…と呆れたように長い息を吐き出した

「出会い頭に潰すんじゃねーよ」

「だって殺しても死なないじゃないですか」

「……。」

矛盾している言い回しだが、彼の名前が表すように事実なのだから仕方がない

全部元通りになった彼は不満そうに一瞥しただけだった

スーパー袋の中身を拾い上げて確認し、卵が…と呟く。

落としたときに割れてしまったんだろう。破れた底から粘液状のものが垂れて地面にシミを作る

悪いことしたなー

「ナガレ、お前な…」

どんな感情を持って俺を追い回すんだよ…と気怠そうに首もとの血を払った彼に

「ゾンビマンさん、好きですよ」

と、告げてみる

血は全然落ちなかったらしい。諦めて上着を脱いでいる

「お前が好きなのは俺ではないだろ」

壊れない玩具で遊ぶのは楽しいか?

以前に、怪人に似たようなことでも言われたんだろうか

呆れと若干の嫌悪感。敵意に混じる少しの殺意。

「……。」

ありありと感じた負の感情に、思わず口を閉ざしてしまう

否定は出来なかった。だって、好きな人に嘘を吐きたくないもの

何も言わないことで、相手の中でもう話は終わったことにされたらしい

「ほらもう気が済んだだろ」

と踵を返す。

その背中がなんだかとても怖かった

「…壊れない玩具だから興味を持ったのは事実です」

でも、今好きなのはそれだけじゃないです

「私もほとんど鉄くずになって死ねなくなりました。だからですかね?すぐに再生して、死なないあなたを見ていると安心するんです」

「……。」

こちらをゆっくりと見たゾンビマンさんは、先程のような負の感情を浮かべてはいなかった

サイボーグになって失ったはずの心臓が脈打っているような錯覚を覚える

仮にも。と、彼は少しだけ笑って口を開いた

「仮にもヒーローなんだから、怪人に間違われないようにしろよ」

お前を倒すことになるのは願い下げだ。

こちらに歩み寄って、頭を一度だけ撫でてくれる

オイルが沸騰して、体内の武器が暴発してしまいそうだ

…実際は、私の鋼鉄の表面を温めるにも至らないんだろうけど

「ゾンビマンさん、あの…」

何も言葉が出ない私に、じゃあまたな。とあっさり別れを告げて去っていってしまう

待って待って、さっきの言葉の意味を教えていって貰わなきゃ、しばらく眠れそうにもない

遠ざかる背中を追いかけようとしたが、背後から迫ってきた異常な数値の熱量反応を認めたため、回避する

先程ゾンビマンさんの頭部をぶっ飛ばした騒ぎを聞きつけて飛んできたらしいヒーロー
…私と同じサイボーグのルーキーと、なんか哀愁漂うハゲがこちらを確認するなり呆れた顔をになる

ゾンビマンさんの姿は見失ってしまったため、仕方なく相手をしてやることにする

サイボーグは弱くて興味ないが、哀愁ハゲはなんか怖いから嫌い

「また貴様か、ナガレ。先生の手を煩わせるな」

「律儀にまたきたの。えっと、ジェット君とキ○タマさん」

ジェノスとサイタマだったらしい。怒られた



☆☆☆
おかしいなー、ゾンビマンどこ行った←

興味ない人は全部うろ覚えなナガレたん

ちなみに、よく怪人と間違われるがそれはそれでおもしろいらしい

最近タツマキちゃんにちょっかいかけて手足をぶんどられたが気にしてないらしい

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