真相と泣いちゃう系
ゲーチスから渡されたトモダチは、カナタに会わせろと僕に何度も訴えた
レントラーは、カナタのトモダチなのかもしれない
ずっと眉間に皺を寄せているレントラーと共にヒウンタウンにある建物に入る
ヒウンタウンはビジネスに関わる人が多い
トモダチを自分の仕事のためだとか会議の為だとか、ニンゲンだけの都合でバトルをさせることが多いと言うことだ
いつの間にか握り込んでいた手のひらに爪が食い込み、痛みを訴える
こんなものではない、死に直面するような痛みをニンゲンはトモダチ達に与える
早く引き剥がさなくては…これ以上トモダチ達を傷つけないためにも
同士達の居るビルの扉をくぐるなり、カウンター越しに見えるゲーチスの写真を食い入るように見つめるカナタがいた
そんなに見つめても、動きやしないと思うんだけど
レントラーが目を見開き、獲物に飛びかかる前兆のように体を屈ませ電気で筋肉に刺激を与え始める
これは、トモダチに対する挨拶にしては少し過激かもしれない
カナタの名前を呼ぶと、勢い良く振り向いた姿が瞬間的にブレで視界から消えた
うなり声を上げるトモダチに押し倒されながらのカナタと目があう
トモダチに怒りの感情をぶつけられているのに、違う何かに怯えたように瞳が揺れていた
少し、ニンゲンに傷付けられたトモダチ達に似ている目が、レントラーに向けられる
「お前粘着質ね。そんなに俺が好きなの?」
どこかとぼけたカナタは、言葉とは裏腹に笑ってはいなかった
「カナタに手をだすなぁ!」
と気合い玉を放とうとするマスカットを制しレントラーと向き合う姿は、壁際に追い詰められた小動物のよう
マスカットの手の内で、気合い玉がしぼんでいく
「お前、アソコにいたコリンクなんだろ?恨まれて当然だと思ってる。てめぇが襲って来んのも、俺を嫌うのも」
アソコが指すのが何処かは解らないが、レントラーとカナタの中では通ずるものがあるらしい
レントラーの表情が大きくゆがんだ
「違うっ!」
レントラーの目が、今にも泣いてしまいそうだった
「何でお前は俺を否定する!」
「お前が何を言ったって、俺にはわかんねぇよ」
「わからないんじゃない!お前は逃げてるだけだ!」
「カナタ、レントラーは…」
レントラーの言葉をカナタに伝えようと口を開くけれど、ぐっと睨まれ閉ざしてしまう
カナタはレントラーや僕やマスカットに視線をくるくると回していたけど、何かに耐えきれなくなったかのように唇を噛む
震えた瞼から涙がこぼれ落ちると同時に堰を切ったかのように声を荒げ
「うるせぇんだよ!」
と叫んだ
必死に何かを訴えるレントラーもカナタを守ろうとするマスカットも口を閉ざす
「俺にはわかんねーんだよ、何言われても訴えられても聞こえねーんだよ!」
最初から話が分かるならあんなことしなかったさ、堂々と生きていけていたはずさ
「今更何を言われてももうやっちまった後なんだよ!今更何を言われてもやり直せないし何の償いをしても間に合わないんだ!」
途中から文法も崩れ出し、終いには嗚咽しか漏らさなくなったカナタの頭を抱えて、マスカットは必死に慰める
カナタは、何かひどいことをトモダチ達に行ってきたんだと推測できる内容がいくつかあった
僕の同士としてこの場にいるはずなのに、トモダチの解放を共に願ってくれているはずなのに
そう問い詰めたくても、カナタとカナタのトモダチ達の関係が今まで出会ってきた彼らと違うから、どれが真実なのかわからなかった
何かしら責めていたはずのレントラーが呆れたように震えた息を吐き、カナタの上から飛び退いて僕を見上げる
「笑いたいだろ。俺はこいつに認められて、連れて行って欲しかったんだよ」
少し混乱しているのかマスカットを抱きかかえて鼻を鳴らしているカナタを、愛しそうに見つめる
「君はカナタにひどいことをされたんじゃないのかい?」
そう尋ねると
「さぁ?本人は後悔してるんだろうけど」
少なくとも俺は感謝してる
そう笑った目はカナタに似ていた
☆☆☆
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男の子なんだから泣かないの!
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