心にぺたり

ミオの図書館で出会った少女に、僕は恋をした

飾りっけのない子で、自然なままの色の髪と旅なんか知らないんだろう綺麗な白い手をしている子だった

話したこともないけれど、初めて見た日から気になって仕方がなかった

そんな彼女は図書館にいることが多く、僕も彼女を見るために最近は図書館に通い詰めていた

「あっ。」

僕が本を選んでいる横で彼女の声がした

反射的に視線をやると、指先を見つめていて、そこからゆっくりと赤い線が膨らんできている所だった

どうやら、紙で指先を切ってしまったらしい

そういえば、鞄に絆創膏が入っていたはずだ

そっとその場を離れ、机に置いてあった鞄の中を探す

「あった」

無地の絆創膏を一枚持ち、先程の場所に戻る

彼女は本を膝の上に置き、器用に床にお尻を付けないようにしゃがみ込んでいた

「はい、どうぞ」

「あ、」

絆創膏を渡そうと近付くと、彼女は少し戸惑ったように見上げてきた

彼女の膝の上の本には小さな箱があって、その中から取り出したんだろう可愛い柄の付いた絆創膏がすでに指先に貼られていた

「あ、あの」

「いいよ、気にしないで」

戸惑いがちに受け取ろうと伸ばされた手を避けて、何事もなかったように鞄の元まで戻る

下心がなかった訳じゃないけど、わざわざ気を使わせたい訳でもなかったから、これでよかったんだと心の中で誰にでもなく言い訳してみる

急いで探して、見つけたときに少し安堵した絆創膏は、この短時間でお役御免…なんだか今の自分に似たそれに、少しだけ申し訳なさと情けなさを感じた

いつの間にか握ってしまったらしく、皺だらけでもう使えない絆創膏を苦笑しながらゴミ箱に入れる

「格好付かないなぁ」

思わずそう呟いて、本を開く

それでも口の端が緩んでしまうのは何故なのか

今の僕にはよくわからなかった



☆☆☆
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格好付けきれない自然体がなんかきゅんとする

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