瞳と理解

町中をぶらぶらしていると、見知った姿を見つけた

黄緑色の大きな帽子に、チューリップを逆さまにしたような形の動きにくそうなスカートを履いた少女が、こちらに気付いたらしく大きく手を振りながら走って来るのを見て、パートナーが嬉しそうに鳴く

「カナタさーん!」

危なっかしく近付いてくる為、こちらも歩いて距離を積める

なんだろな、周りの視線がちょっと痛かった…うん。

「久しぶりだな、ベルちゃん」

肩で息をするベルにそう声をかけると

「はい!」

と元気良く返事をしてくれた

その後ろで、息を切らさず平然としている女の子が見上げている

「えと、そちらは?」

「あ、さっき知り合ったアイリスちゃんです!」

「こんにちは、お兄ちゃん」

「どうも」

礼儀正しく頭を下げた彼女の名前に、聞き覚えがある。

確か、この幼さでジムリーダーの候補に挙がるほどの実力を持つ、ドラゴン使いの一族の子供だった気がする

大きな目が、何かを計るように開かれていて、少し気まずさを覚えた

それはパートナーも同じだったのか、ベルと遊ぶのをやめて俺の後ろに隠れてしまう

無言で一分は見つめ合っていたんじゃ無かろうか

ベルだけが何故かにこにこしていた

「お兄ちゃん、すごくポケモンを大事にしているのね」

「……。」

「お兄ちゃんのランクルス、おじいちゃんとオノノクスみたいに強く繋がってる気がするよ」

にっこりと音が付きそうな程笑ったアイリスに、少しおどけて

「そう見える?」

と尋ねると迷い無く

「もちろん!」

と返された

マスカットが嬉しそうにアイリスに飛びついていく

「私もカナタさんみたいになれたらいいんだけど」

とはにかんだベルに、俺みたいにはならない方がいいよと苦笑

少女2人がきょとんとして、マスカットは不思議そうにこちらを見上げてくる

「どうして?」

どうしてカナタさんみたいにならない方がいいんですか?と問いたいんだろうそれが

俺にはどうしてそんな過去を持っているの?と問いただされているように聞こえた

気付くのが遅いから。とだけ答えると、6個の瞳がさっぱりわかりませんと言いたげにパチクリしてた

「まあ、お兄さんは君達よりは長生きでね」

色々素直に喜べないんだよと笑うと、難しいんだね。と首を傾げてた

ところでマスカット、お前は俺サイドじゃないのか…?



☆☆☆
カナタさんって不思議な人
何だか隠しているみたいなのに、すごく綺麗な目をしているの
なんだか迷いもあるみたいだけれど

カナタさんがポケモンを大事にしているというより、ポケモンがカナタさんを好きなんだなって思う
なんだか海みたいに底が無くて、不思議な人

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