捨てないと言って

私はどうして産まれたんでしょう

生を受けた瞬間に、いらねぇごみだ使えねぇ捨てよと
まるで食べ終わったお菓子のゴミを捨てるように地面に投げられたのです

私はしばし呆然として、そして泣きました

私は人間と違い、すぐに生きていくことを学ばねば生きられません。
自ら戦い身を守り、餌をとり、独りで生きなければなりません

しかしながら、あまりの悲しさと寂しさに、固い地面に伏したまま泣きました

野生では生まれてすぐ死ぬ命は少なくありません
私もきっとそうなのだろうと、泣きながらどこか冷めたもう一人の私が見つめている気がしました

その時でした

暖かな手が、私を抱えて

「泣かないで」

と優しい声が、言ったのです



「素晴らしい評価ですね!HABDSが最大の数値!凄い子です!」

何時もより興奮した様子のジャッジさんの言葉を聞いて、ノボリは苦虫を噛み潰したような顔してた

僕も同じ気持ちだから、たぶん一緒の顔してる

駅のホームで迷って泣いてたエネコが、捨てられてたとわかってしまったから

この子は厳選を行うトレーナーのもとに生まれて、バトルには向かない性格をしていたから捨てられたんだ

ジャッジさんと当の本人…というか本ポケモンは僕達の様子に不思議そうにしていたけど

ノボリが取り繕うみたいに少し笑って、それをみたエネコは僕の腕の中で緊張に固まった体を伸ばした

どうやらこの子は、人の感情に随分と敏感な子のみたい

こんな子を捨てるなんて、どんなトレーナーだったんだろう

エネコが望むなら、いや望まなくても見返してやりたい

ジャッジさんにノボリがお礼を言って、僕も一緒に軽く頭を下げる

ジャッジさんがちょっと困ったよう苦笑いした

きっと、ノボリも僕もひどい顔してる

エネコが心配そうに鳴いたから、僕も思わず苦笑いする

不安にさせたいわけじゃないのに

「なんだかごめんね。僕達人間のせいで傷つけちゃって」

でもボクは、君を強くして見返してやりたい。君を捨てた人、君を弱いという人全部

僕を見つめたエネコに、ノボリも口を開く

「もちろんクダリはあなたに強要するつもりはありません。あなた様も望まれるのでしたら、でございます」

しかし私もクダリと同じ考えを持っております

「どうする?」

僕とノボリを交互に見つめてしばらく確認するような仕草をしてから、エネコは大きく頷いて鳴いた

「うん、キミはとってもいい子」

ぎゅーと抱き締めると、ほっぺたをぺろりと舐められた

キミのこと、たくさん幸せにしてあげるからね



私はどうして産まれたんでしょう?

きっと、あなた様方と出会うために産まれたのです

私は強くなって、誇りに思われるようなポケモンになりたいと、その時確かに想い誓ったのです

私は今日も、彼らと共に歩んでいます



☆☆☆
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難産の割に納得して無い感…もったいないからあげとくけどね

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