愛してますよ

ポケモンセンターから出ると、すっかり日も暮れていた

少し肌寒い空気を吸い込み、空を見上げる

まん丸の月が見下ろすなだらかな丘の上は、噂通り空が綺麗に見えるところだった

遠いところだけど来てよかったな

隣に誰かが来た気配がして、視線を下ろす

「今宵は月がきれいですね」

少し茶目っ気を出して言ったのに、パートナーのジャローダには冷たく一瞥されてしまった

『なにそれハルト』

気持ち悪いんだけど。ととぐろを巻いた彼に苦笑しながら

「イッシュ地方よりずっと東の国の『愛してる』の翻訳」

と答えると、鼻を鳴らして

『まどろっこしい。』

と切り捨てられてしまった

素直に愛してるでいいじゃないか。と僕の周りにとぐろを巻いて、座るように促してきたので言葉に甘えて胴に座る

「素直じゃないんだよ」

きっとシャイなんだよ。と言ったら君を見習わせないとね。だって…どういう意味か問いただすべきかな

『そう言えば、前にNが似たような話をしていたね』

「?」

見上げると、赤い目を細めて笑いながら得意気に

『ハルト、君となら死んでもいいよ』

と呟くように耳元でささやかれる

「ジャローダ、それって…」

『僕はそんなまどろっこしい言い方は好きじゃないよ?』

クスクスと笑う声が夜の澄んだ空気に溶けていく

悪戯めいた瞳に、僕の緩んだ顔が映っていた

「好きだよ、大好きだよジャローダ!」

『当然』

ジャローダに抱きつくと、尻尾で背中を撫でられた

ふんと鼻を鳴らして空を仰いだパートナーは、満更でもないみたいで口角が上がっている

でも、少し気になるのは…

「ところでジャローダ、なんでNとそんな話してたの?」

『さぁ?』

「意地悪っ」

『意地悪で結構だよ』

背中を撫でていた尻尾がぐるりと僕の胴に回って、踏ん張る暇もなく草の上に投げ出される

酷い。と呟くと、パートナーの笑い声が響いた

カサカサと草を分ける音がして、満月をバックにしたジャローダの顔がのぞき込んで近づいてくる

起き上がろうとしたら、鼻先で額を押されて仰向けのままパートナーを仰ぐ

『僕のすべては、君のものだ』

なにそれ。と尋ねると、僕なりの訳し方…かな?なんて、含んだ笑みで返された

パートナーには適わないなぁ

「あれ、まどろっこしいのは嫌いなんじゃないの?」

と聞いたら、もう一度腰に尻尾が巻き付いてきて投げ飛ばされたけど

愛が痛いよ……



☆☆☆
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