リア充爆発しろ

職場を彩るクリスマスカラー

昨年に使ったきりだった飾りを引っ張り出しきてバトルサブウェイの天井やら壁やら、通行の邪魔にならない位置に付けていく

事務所の女の子達は手伝わないのに、運転手や整備士、トレーナーの女の子達は飾りの手伝いに駆り出されるのは些か不満なんですけど

「ジングルべー、ジングルべー、ランランらーらーらーん」

気持ちを持ち直そうと歌ってみたら

「ナガレ様、歌うならきちんと歌って下さいまし」

と、デリバードのヌイグルミを飾っていたノボリボスに怒られた。ファンシーなものがとことん似合わない人だ

もっと無表情を崩せば格好いいのに

ノボリボスの後ろで飾りを運んでいたカズマサが遠退いていく。そっちは外だぞ

何をそんなに不満顔をして見えるのですとあきれた様子のノボリボスに、手持ちの子達をボールから出して答える

「クダリボスが私のユレイドルにリースとかキラキラした奴を巻き付けてツリーにしたんです」

ゴチルゼルなんて頭のてっぺんに星が付いてたんですよ。と指さすと、ノボリボスはしばらく目をまん丸にして、小さく笑った

彼の視線の先でユレイドルはリースを揺らし、ゴチルゼルはサイコパワーかなにかで体に巻かれた電飾を光らせている

「外せば宜しいのではありませんか?」

「気に入ったらしいんです」

「おやおや」

手を伸ばしてリースを取ろうとすると、ユレイドルはふぃと顔を逸らす

ほら。とノボリボスを見ると優しく目を細めて笑っていた。ちょっとドキリとしちゃいましたよ

「笑い事じゃあませんよ」

と怒ったふりをしてみれば、申し訳ありませんと口角の上がった唇が言った

ユレイドルをボールに戻していると、ノボリボスが思案顔でところで…と笑みを引っ込める

「ナガレ様のクリスマスのご予定は」

ありますか。と小さく首を傾げた姿に、思わず口元を隠して目をそらす

「それはノボリボスが一番知ってると思いますよ」

「真っ先にシフトを入れて見えましたね」

知ってて聞くなんてヒドい。と嘆いてみせるが、ゴチルゼルはトレーナーの泣き真似なんぞ気にした様子もなく飾り付けを始めていた

おまえおやつ抜きにしてやると心に誓う私の頭を、ゆっくりと伸びてきたノボリボスの手が撫でる

何これ恥ずかしい

顔に集まってくる熱を誤魔化す為に

「カップルでトレインに乗って格好つけたい彼氏をボコボコにへこませて差し上げたいだけですよ」

ねーとゴチルゼルに同意を求めると、哀れんだような視線をくれた。ご飯も抜きにすんぞ

「それはそれは」

離れていく手を自然と目が追ってしまう。やだなぁ、恥ずかしい

一人ときめくトレーナーに、ゴチルゼルは飾り付けを済ませてボールに引っ込み代わりのボールが開く

「……おや、ボーマンダ」

「…私とは裏腹に、この子達はイベント事が好きなんですよね」

これまたクリスマスバージョンの手持ちにいよいよ堪えられなくなったか、ノボリボスやその後ろの同僚達が声を上げて笑う

先程から肩が震えていた同僚はスルーしてきたというのに

頭の角の様な部分にかけられた靴下が目にかかっているが、ボーマンダは気にした様子はない。流石に邪魔でしょうよ

ボーマンダを眺めていると、なんだか視線を感じてノボリボスを見たタイミングで

「私は好きですよ」

だなんて優しい声が言うから、一瞬ドキリとしてしまった

当の本人はボーマンダをみてクスクス笑っていた。こっち見てない

「何でですか。どこもかしこも浮き足立って、出掛けても人混みばっかり」

トレインは祝日こそ運行しますから、先輩達は休みたい休みたいって言いますけど

「どこ見てもどこ行ってもカップル!私は仕事が好きで彼氏は作っていないだけなんです!可哀想(笑)とか一人(笑)とかうるせぇんですよぉぉ!」

突然叫んだからか、近くを通ったカップルがびくりと小さく震えてた

そちらが本音ですかと呆れたような面白そうな顔で見つめられ、いえちょっと熱くなりました。と若干我に返り冷静に答えてみる

たぶんもぅ間に合ってないけど

「ノボリボスはどうして好きなんですか?」

「…ナガレ様がイベント事の日に仕事をしてみえる間は、他の異性と過ごしていないと考えられるからです」

私の表情に音をつけたら、ポカーンだろう。

ノボリボスに前髪を耳にかけられ頬を撫でられてから間抜け面を晒していることに気が付き、口を閉じる

私にも、チャンスがあると思うことが出来るからでございますと念を押すように言われた

「……!」

「おや、どうなさいましたか?」

なんて白々しいだなんて、いつもの憎まれ口も出てこない

「あの、いま、…私、自惚れちゃいますよ?」

「えぇ、ナガレ様。構いませんよ」

今年のクリスマスは職場でとはいえ、御一緒できることが決まっておりますから。だなんてとろけるような笑顔で囁かれ、耳がどうにかなるんじゃないかと思った

今年のクリスマスは勝ち組になれるらしい

ボーマンダの翼の陰で、額にキスを落とされながらそんな間抜けな事を考えていた



☆☆☆
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ボーマンダは空気が読めるいい子
時事ネタって言うの?あんましないから恥ずかしい

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