捕まえた(捕まった)

お家に遊びに来たアーティ君にフシデを紹介すると、アーティ君は一瞬だけ驚いた顔をしてからすぐににっこりと笑った

「ナガレ、初めてのポケモンおめでとう!」

同じ虫ポケモンだね、嬉しいな。と手を叩いて祝福してくれるアーティ君はとても優しい目をしていた

本当に本当に、他人の気持ちに敏感で優しい子

「私もうれしいよ、ねぇフシデ」

『う、うん』

フシデは少年達に虐められたせいか、すっかり人間が苦手になってしまったらしい。

………。

「……アーティ君は優しいから、なにもしないよ」

幼い丸い背中を撫でると、小さく震えた

アーティ君は不用意に近付いたりすることなく、一定の距離をあけたまま笑った

「ぬぅん、出来たら絵を描かせて貰いたいな」

『……うん。』

表情はみえないけれど、ほんのちょっぴりだけフシデの声が笑った気がした

アーティ君はずるい。そう咄嗟に出そうになった言葉を飲み込む

やましい気持ちがある私が悪いのであって、アーティ君はただ純粋に気を使ってくれただけで
フシデはそれを感じ安心して当たり前なんだから

「アーティ君、あのね」

「わかってるよ」

アーティ君は何もかも解ったように穏やかに微笑む

フシデが色違いなのも人間に異常に怯えるのも、何となく察しは付いているのだろう

アーティ君は周りの子に比べて聡い

フシデが怖がらないようにゆっくりと手を伸ばして、頭を撫でてあげながら

「この子のこと、ちゃんと守ってあげてね」

と言う

一瞬私に向けて言われたのかの思ったけど、どうやらフシデに言ったらしい

最初のポケモンがパートナーになることが多いからだろうか

『……わかってる。』

としっかり頷いたフシデに、言葉は解らないんだろうけどアーティ君は満足そうだった

「頼もしいなぁ」

と親バカ全開で笑った私にフシデは少しムキになったように

『これからナガレのことは俺が守るんだからっ』

と力強く鳴いた



☆☆☆
「私ね、この子を見つけた時、すごくすごく嬉しかったんだ」

「???」

「アーティ君なら、どうしてたかな?あの時」

アーティ君は何を言われてるかわからないといった風で、困ったように首を傾げていた

私はなんでもないよと笑って、フシデを撫でた

色違いのフシデを見たとき、この子を助けたらきっと私に依存してくれるだろうと思った

前世に友達も家族も置いてきて、世界を巻き込んだおままごとの中で、絶対に私の味方になるだろうと思った

最低だよね

『俺は別に、ナガレに利用されててもいいよ。利用して、依存してるのはお互い様なんだから』

「そうだといいなぁ」

アーティ君にはわからない、私と彼だけの独り言

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