再会と恨み言

森を避けて遠回りし、ヒウンタウンに繋がる巨大な橋ースカイアローブリッジを進む

2つの橋が重なり、上は人間やポケモン用に、下は物資運搬の為のトラックや車用となっている

さすがイッシュ最大の都市に続く道だけあって交通量の多いこと

手すりから身を乗り出し、さらに下を見下ろしてみれば、何処までも続くような大河が流れていて船が橋の下を行き来している

「貿易の架け橋、と言っても過言ではないんじゃ無かろうか」

なぁマスカット。といつものように声をかけるが、マスカットはこちらを見ておらず、何やら橋の先を見据えて緊張しているようだった

パートナーの視線を辿ろうとした矢先、鋭い鳴き声とうなり声が空気を震わし、激しい衝撃に襲われる

地面に叩きつけられ、喉元に体重をかけられて呼吸が止まった

眼前に迫る鋭い牙が顔をえぐり取ろうとしている

このままじゃ、殺される

「気合い玉!」

『ーーー!!!』

咄嗟に叫んだ言葉にパートナーは素早く反応して青白い光の玉を勢い良く放ち、俺の上に乗っていた何かを退けさした

俊敏な動きで距離を開けたそれを確認しながら体を起こし、俺の傍らについたマスカットを撫でる

「ごほ、げほ…助かった、マスカット。ありがとな」

『ーー!』

マスカットは気にすんなと言うように鳴いて、またこちらを狙って飛びかかる体制に入った相手に気合い玉を飛ばした

敵意剥き出しで襲ってきたのは、黒と青の毛並みと強靭な筋力を電気の刺激によりさらに強化する能力を持つポケモン…

「レントラー…なんでこんなとこに?」

「おや、感動の再会はいかがでしたか」

『ーー!』

マスカットに促されて上を見ると、サザンドラに乗った派手マントがバサバサ靡いていた

そのまま強風に煽られて飛んでいけばいいのに

「…ゲーチス様。これはすてきなご挨拶ありがとうございます。」

どうやら、こいつがレントラーをけしかけて下さったらしい

「見覚えがあるでしょう?あなたが作ったものですから」

なかなか能力もレベルも高くて、少し捕獲に手間取りましたが。と続いた言葉に、レントラーは恨めしそうに吠える

マスカットが何か言いたそうにおろおろしていた

サザンドラから飛び降りた大男を睨む

「…俺に何をさせたいのか、言わせたいのかは知りませんが…俺は」

過去に行った行為は間違いだと気付きましたので。これ以上なにかするつもりはありません

出来るだけ無表情に、感情を込めずに言う

予想外にもゲーチス様は、その件に執着は薄いようだった

「それでも別にかまいませんが、」

あなたが生み出し、捨ててきた命がそれを許しますかね

そう言いながら、彼がいくつかのモンスターボールをマントから取り出した。

おそらく俺が生み出し、逃がしたポケモン達が収められているんだろう

まるで俺を責め立てるように、がたがたと揺れるボールのぶつかり合う音が耳に付く

うなり声を上げていたレントラーが答えを求めるように黙った

「許されなくても構いません。してきたことは」

事実ですから。

マスカットが俺の腕を掴んで何か訴えているが、王子様かツタージャ少年と違い、何を言われているのか俺にはわからない

「なるほど、よくわかりました」

といやな笑みを浮かべた大男は、レントラーをボールに戻しながら

「そういえばあなたは、ポケモンの強化だけでなく、新たな戦いに特化したポケモンを作っていたとか」

別の地方のとある組織は、戦いの遺伝子を多く受けたポケモンを生み出したという話もありますし、不可能ではないでしょう

「私はいつでもお待ちしていますよ」

そう告げて、サザンドラの背中に乗る大男に、マスカットが気合い玉を投げつける準備をしていた

「……ほっとけ、マスカット」

『ーーーーーーーー!!』

よっぽどのフラストレーションを感じていたのか、特大の気合い玉が遠退くサザンドラの横をかすめて空に消えていく

まだきーきーと騒いでいるマスカットを宥めつつ、先程から心配そうにかたかたなっていたボールを撫でる

「クリームもありがとな」

恨まれて嫌われて守られて心配されて…なんだかどっと疲れてしまった

とりあえず今の気分は最悪だ



☆☆☆
あのデカブツ、サザンドラの背中から落ちちまえばよかったのに。

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