目が覚めた

目覚ましの音で目が覚めて、しばらく窓から差し込む日光をぼんやりと眺める

長い夢を見ていた、そんな気がする

雀が羽音をたてて飛んでいくの見送ってから、ベッドから起き上がる

今日は出掛ける用事があるんだ

「はは、おかしな夢だったな」

よく覚えてないけど、自分が事故で死んで、生まれ変わってポケモンの世界で育つなんて

ただ、美人だったのは良かった

後で誰かに話したいな

出掛ける準備をするために部屋の中を物色していると、母さんが部屋に入ってきた

おはようと挨拶したのに、母さんはそれを無視してただ突っ立っている

一体何なんだ

もう一度声をかけようとしたとき、いきなり泣き崩れた

「ナガレ!なんで、なんで死んだの!!」

車が迫る。苦しい。痛い

光が遠のく

あぁ、私は、







「…きて……おき……………起きて!!ナガレ!!」

激しくグラグラと揺らされて、最初に見えたのはミルクティ色の髪だった

心配そうに揺らぐエメラルドグリーンを見つめ、我慢できずに抱きつく

アーティ君は、しばし困惑したのち、頭を撫でてくれた

「なんて、タチのワルい夢」

そう、今の年齢にそぐわない言葉を吐くほどには最悪の気分。最低の夢だった

「大丈夫?ナガレ、すごく魘されてたから」

起こしちゃった事怒ってる?なんて聞かれて、冷や汗だらけの顔で笑ってしまう

例え意味もなく起こされても、アーティ君相手に怒る訳ないのに

悪夢から助け出してもらって責めるものか

「大丈夫だよ、アーティ君。ありがとう」

「でも、泣いてる」

間髪入れず返ってきた声を聞いて、初めて自分が泣いているのに気がつく

気がついたら止まらなくなっちゃうから、女の涙は卑怯とか言われんだ

怯んで、逃げてくれたら、意地でもって泣き止んでやったのに…

「僕が側にいるからね、ナガレ」

なんて、アーティ君は笑う

堪えきれるわけ無くて、目一杯に声を上げて泣く

どんな夢だったとか聞かずに、ただ受け入れてくれた

何事かと駆けつけたハハコモリが困った顔をして、アーティ君が説明してくれる

その間も背中をなでる手が優しくて、心臓が苦しかった

私は、最低だ

私は、

君の姿を見たとき、ひどく安心したと同時に、同じくらい絶望したんだ



☆☆☆
優しい君と、両極端にいる最低な私

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