言葉と秘密

どうしてこうなった

虫ポケモン達を治療し終え立ち上がると、次の町のジムリーダーが森から女の子を引き連れて歩いて来た

ジムリーダーと女の子はかなりの美男美女カップルに見えるが、カップルにしては…年の差がありそうだから、ジムトレーナー何だろうか

『ーーー。』

何かを告げて引っ込んだクリームのボールを右手で拾いながら、何故か笑顔でジムリーダーに近寄ろうとしているマスカットを左手で引き止める

お前ら自由すぎない?

「君が彼らの手当をしてくれたんだね」

そう笑って俺に礼を言うジムリーダー…アーティさんの示す彼等とは、虫ポケモンの事だろう

「えぇまぁ…」

何となく気まずさを覚え、濁してみる

アーティさんは友好的だからいいんたよ

その背後から顔を覗かせる女の子…幼いながらもものすっごく美人なのだが、体中に穴をあける勢いで見られたら流石にちょっと怖い

俺、なんかした?初対面なんだけど…

何故か見つめ合っていると、アーティさんが苦笑いする

「ぬぅ。あまり見てると失礼だと思うよ?」

アーティさんが窘めると、小声で何か呟き、何かと会話するようにしてから、改めて見上げられる

「あなた、虫ポケモンもってますか?」

「は?」

予想外すぎる質問に思わず変な声を出してしまった

女の子が目に見えてうろたえ始め、マスカットが慰めにいく

「あ、いや…あの、」

マスカットに頭をなでられ、赤面していく女の子を優しく眺めていたアーティさんが唐突に

「この子は虫ポケモンの言葉がわかるんだよ」

とだけ言った

俺の周りはなんでこうも話ができる特典がついているのか…と言うより、その情報を何故今知らされたのか

にっこり笑みを作ったアーティさんを見つめる

何考えてるか、よくわからない人だ

段々と落ち着いてきたらしい女の子が

「なんか、呼ばれた気がしたんですけど、気のせいですよね…やだなぁ」

とはにかむ

未だ周りをうろうろ飛び回るマスカットに鞄から取り出した甘い蜜を渡している

マスカット、お前最初からそれ目当てか。匂いでもしたんだろう

いつの間にかスケッチブックを取り出し絵を描き始めたジムリーダーと、はにかむ女の子を見つめながら、ポケットに手を入れる

指先に当たったそれを確かめて、握り込むと、微かに熱を持った気がした



☆☆☆
ところで、俺が放置されすぎて辛い件

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