ほだされた
カーペットの上で、天井をバックに俺を組み敷く人物を茫然と仰ぐ
甘えん坊のコリンクと戯れてたら、いきなりレントラーまで進化して襲ってきた
今の状況は、まさにそんな心境、そんな感じ
親戚っとこのデンジは、昔から俺によく懐いていた
それがなにをどう間違ったか、年齢を重ねる毎に、俺のことを恋愛的な意味で好きだと言うようになってきたんだ
一時の気の迷いだと思って曖昧に逃げてきたんだけどな…
今日も今日とて、昼過ぎに起きてみると、俺の会社が休みの日を完全把握しているデンジが勝手に押し掛けてきていた
「お前、また飽きずに来たのか。ジムはどーしたよ」
「大好きなハルトに会いたくて、早めに切り上げてきた」
「ふーん」
告白を織り交ぜた答えを軽くいなし、洗面所へ向かう
デンジの不満そうな視線が横から突き刺さっているが、あえて無視を決め込む
俺を好きだなんて、一時の気の迷いだ
それに身内だけでなく、同性。歳だって離れてる
憧れが行き過ぎただけなんだろう
デンジは顔だって整ってるし、この町のジムリーダーだし、もちろんポケモンバトルも強い
女の子が放っておくわけがないんだし、そのうち彼女を作って見せに来て、今日のことも笑い話になるはずだ
…なんて並べる思考がどこか言い訳がましくて、顔を強く洗ってみる
ほだされてんじゃねーよ、あいつの人生潰す気か
洗面所から出て、ソファーを占領しているデンジの傍に寄る
時計を確認すると、昼食には少し遅い時間を示している
「おい、デンジ、」
昼飯どうする?と聞こうとした瞬間、視界がぐるんと一転する
「ハルト…いい加減、認めろよ」
混乱する俺の両腕をいとも容易く頭の上で拘束して、どこからか取り出した紐でぐるぐる巻いているデンジは、なんの表情も無しに近づいてくる
抵抗する間なんて一切なく、唇を奪われ、舐められる
「俺は一時の気の迷いでハルトのことを好きなんじゃない。本気なんだ」
年下のガキだとばかり思っていたが、精悍な男の顔付きで言われ一瞬怯む
その隙をついて、寝間着代わりに来ていたジャージと下着を脱がされた
なんか、これはまずい気がする
「おい、デンジ…あっ…」
「ハルト、黙ってろ」
手の自由を奪われ何も出来ない俺のそれを掴んで、ゆるゆると擦りながら口に含まれる
「ひっ!……まてまてまて、ぁ…まずいっ、てぇ…」
生温い口内に包まれ、ぬるりぬるりと先端を苛められ、腰が跳ねた
必死に髪を掴んだりしてみるが、容赦ない刺激を止めてくれず熱が溜まっていく
「…デンジ……ぃ……ヤバイって…」
テレビが暢気にポケモンの大量発生を伝えてるのを尻目に、デンジは両手でそれの裏を擦って、先端に歯を立てる
「……っ!」
限界でした
呆気なくデンジに欲を吐いて、襲ってきた脱力感に負けてただ荒い呼吸を繰り返す
ごくん。とデンジの喉が音を立てる
「…ぁ…お前、俺の」
「飲んだよ」
しれっと言って、口付けてくる
独特の匂いに顔をしかめると、意地悪く口の片方だけを吊り上げて笑った
「こーゆーこと、簡単に出来るくらいにはハルトのこと好きなんだよ」
だからさっさと諦めて俺のこと認めろ。好きになれ
まっすぐ過ぎるくらいまっすぐな視線を受け、顔に熱が集まってくる
一時の気の迷い…だと、諦めてたんだが、どーしてくれんの
「お前、身内で同性で歳の差なんて、絶対後悔すんぞ」
とりあえず毒づくと、んなもん気にして人を好きになれるかっての…だって
俺よりお前のが大人だよまったく
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