ちゅーされた

カチャカチャと、プラスチックのお皿が音を立てる

なんのおかずのつもりなのかビーダマと紙くずが盛られていて、段ボールに布を被せたものに置かれた

「はい、ご飯だよナガレ」

とにっこり笑ったアーティ君は、律儀に子供用のクルミルの描かれたエプロンを付けていた

私の家に良く遊びに来るようになったアーティ君は、最近おままごとにハマったらしい

男の子は、虫とか追い回す時期じゃなかろうかと一瞬考えたけど…

フシデなんて追い掛けた日には、ポケモンセンターのお世話になるわな。うん

私が小さい頃は、用水路で魚やザリガニを捕まえたものだったけど…

暖かな日ざしが差し込む窓の外をしばらく眺めていたらアーティ君に髪を撫でられて、視線を段ボールのテーブルに戻す

色彩豊かなビーダマがキラキラ光っている

「アーティ君、普通は逆なんじゃない?」

ん?と首を傾げたアーティ君が子供とは思えないほど色っぽくて、少し言葉に詰まってしまった

しばし見とれてから、さらに首を傾げたアーティ君を見て我に返り、お料理を作るのは女の人のすることじゃないの?と聞いてみる

すると、私の手を持ち上げて、ふんわりと笑った

すごく可愛い…

「ぬぅん?お嫁さんの手が荒れるくらいなら、僕が家事をするよ」

お花を背景に散らすアーティ君が天然タラシだった件

すごくドキリとしましたよ。心臓に悪い

「アーティ君の手のほうが綺麗だし、指も長いよ。」

ちょっと照れつつそう返してみたが

「ありがとう。でもボクは、ナガレの白くてちっちゃいこの手の方が好き」

と、私の指に唇を寄せて、とろけるみたいに笑う

妙にそれがくすぐったくて身を捩ると、可愛いと笑ったアーティ君にぎゅーと抱え込まれる

前世の年齢分が加算されているのにもかかわらず、大人の余裕なんて持てる訳なく…

どぎまぎしながら背中に手を回すと、頭上で嬉しそうに喉を鳴らした

ちくせう、可愛いのはあなた様です



☆☆☆
その様子を見ていたハハコモリが『あらあら、可愛い』と言いながらにこにこしてて恥ずかしくなった

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