痛い優しさ

王子様やツタージャ少年と別れ、森へ向かう

なんか知らんが、森で運ぶものがあるらしい

間取りを把握した博物館から、何か持ってくるんだろうか

そう思うと若干憂鬱だが、無視する

焼林檎は、王子様を一人にするのは心配らしく、あちらに付いていってしまった

俺は淋しいぞ。

王子様に対してちょっとした敗北感を覚えながら歩く

そういや焼林檎は進化してから数日しか経っていないが、活発になった気がする

マスカットは最初から人懐っこくて純粋で優しかったな

マスカットのおかげで、俺はあの場所から出る決心が出来たんだ

ちょっとしみじみとしていると、進んでいく道に何か違和感を覚えた

「んー?なんだあれ」

目を凝らしてみれば、赤紫の物体がいくつも転がっている

どうやら、森から移動してきているらしく、よく見れば黄緑、緑、紫と様々な色があるらしい

「動いてるな。ポケモンか?」

『――!』

普段、滅多なことでも無いかぎり自分から出てこないクリームが、ボールから出てきてそれらを集めてくる

『――』

「成る程。フシデ、だな」

一瞬身構えたが、よくよく考えればこんな特徴的な赤紫色をしているのは彼らくらいしか居ないと、肩の力を抜く

ただ、どうみても傷を負って人間に敵対心を持っているのだが

クリームが心配そうに鳴く為、軽く撫でて宥めてやる

森で何が起きているのか…ありありと感じる嫌な予感はとりあえず後回しにしてしまうことにしよう

『――』

「んー、マスカット、まわりの奴らも集めてくれ」

勝手に出てきたマスカットに指示を出し、鞄から傷薬や木の実を取り出す

もしかしなくても、同士たちが森を荒らしているんじゃ無かろうか

王子様が見たらさぞショックだろうに…

時折思うのだが、王子様を慕う輩も確かにいるのだが、目的が明らかにズレている輩が居る気配がする

例えばゲーチスであったり、例えば賢者を名乗るジジィ達であったり
ポケモンバトルすら嫌うN様と違い、厳選された手持ちを所持していると聞く

厳選されていたと言うことは、少なくとも俺のような人でなしや、卵から生まれたばかりのガキを野性に放しまくるろくでなしの容認をしたと言うこと

N様を洗脳したのはゲーチス様だ。と仮定したならば、ゲーチスは王子様と同じ目的を掲げているはず

ならば何故?

毒の刺に刺されないよう手袋を着けながら、思案しても答えは出ない

ただ、胡散臭いものが後ろで渦巻いているのは凄く不安で不快だ

「ほら、何もしないから傷見せてみ?」

集まってきたクルミルやクルマユ、ホイーガ達を手当てしていく

少し怯えつつも、治療後に感謝のつもりか俺の足にほんの僅かに身を寄せてから草むらに帰っていくポケモン達

それを見送りながら、少しだけ唇を噛む

一度傷つけられたなら、嫌いになっちまえば良いのに

ポケモン達の目に、王子様が重なるのはなんなのか。

クリームとマスカットが心配そうにするから、へらっと笑って誤魔化してみる

お前らも俺を嫌って蔑んでもいい立場なのに、なんでそんなに優しくするわけ?



☆☆☆
別に嫌われたいわけじゃないけど、好かれることをしていたわけじゃないから

純粋に好意を寄せられると、少し苦しくなるのは俺が善人でないからなのか。

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