役得と体質
今更、この幽霊吸引体質を恨んだりしないさ
見えないけど、夜に体を乗っ取られたり、記憶が吹っ飛んで傷だらけになってたりと、不満だらけではあったのは否定しないが
まぁ、そのお陰でマツバさんと知り合えたんだ
だけど…
「…あぁ………マツバ、さ……ん…ぁああぁぁ……っ!」
ドクン。と体内に弾けた熱と同時に、自分も絶頂に達してしまう
後ろから伸びてきた手に顎を捕まえられて、無理矢理に上を仰がされると、薄く細められた目が金色に輝いていた
「はい、除霊おしまい」
心底楽しいですと言わんばかりの表情で、ぱっと手を離される
咄嗟のことに対応できず、重力に従い顎を床に強か打ち付け、悶える自分から離れていく背中の温度が憎らしい
何か一言嫌味でも言わなきゃ気が済まないと口を開こうとしたが
ズルリ
「…っ」
体が離れると同時に、体内から引き出された大きな質量に、体が跳ねた
「なに、ナガレったら感じちゃったの?」
なんて言いながら、マツバさんが喉をクツクツ鳴らす
…図星ですけどなにか?
言い返す言葉も思いつかず、ただ睨み付けると、ごめんねと楽しそうに謝罪される
マツバさんは、大人びた空気にゆったりとした見た目とは裏腹に、意外と子供っぽい性格してるんだ
身に纏う着崩れた着物から覗く胸元にかいた汗が、艶めかしくて目を逸らす
すらっと伸びる手足の、細身のくせに程よく付いた筋肉だとか、雪のように真っ白な肌だとか、少し骨張った関節だとか、どこを見ても目に毒なんだ、この人
やわらかな金糸を揺らして、目を細めて、まるでとろけるように
君の不満そうな顔が一番好き。だなんて宣った唇を指で摘み上げる
「うるさいですよ。第一、自分はこの『除霊』に文句が多々ありますからね」
「えー、ナガレの為にやっているのに…」
「やり方があるでしょ、やり方が!」
除霊や、特異体質を押さえるためにマツバさんの力がいるのは確か
でも、夜の営みは必要なくて、要は体が触れていればできることなんだ
なのに、こうしないとマツバさんは力をくれない
お腹の中に注ぎこまれた熱にふらふらしながら、お風呂場へ向かう
当然のように背後に続く足音は、毎度のお約束
…なんだかんだで、後処理までしてくれるんだから、優しいのかそうでないのかわからなくなってしまう
「ナガレ…また明日も、たっぷり入れて上げるからね」
後ろから抱き締めてきて、お腹を撫で、うなじを舐めあげたマツバさんは幸せそうに言う
「だから、僕に依存してよ、ナガレ…」
残念、自分は何年も前から、あなたなしでは生きられない体質になっているのです
などと可愛いことなど言わず、抱き締められたままお風呂場に足を踏み入れる
鏡に顔が映るなり、マツバさんに頬を摘まれる
「可愛い顔」
人の不満顔が好きなんて、人のことは言えないけど性格悪いの。
[ 179/554 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]