もしも、違えば

勉強がしたいから付き合ってほしい。なんて王さまが言ったから、俺は一肌脱ぐつもりだったんだ

一肌じゃなく、服全部脱がされるとはさすがに考えもしなかった

「…ぃ……はっ…………」

問答無用で団服を脱がされ(下っぱの俺は抵抗なんて許されてない)、後ろの穴に指を入れられ、掻き混ぜられる

その際に塗り込まれたローションには媚薬が入っていたらしく、異物感があったのは最初だけで、あっという間に喘ぎ声しか出せなくなってしまった

「ここが良いのかい?ハルト」

悪戯に刺激されてただでさえいっぱいいっぱいだったのに、弱いところを攻められて欲を吐き出してしまう

楽しそうな笑い声に、ぎりりと歯を食い縛って答える

「…っ!」

「あ、また出しちゃったんだ」

「……誰のせいで…」

「えい!」

「………っ!!」

何回も繰り返される行為に、吐き出した欲は随分薄い

すぐに訪れる倦怠感に身を委ねることも許されず
手足を拘束されているでもないのに逆らうことを許されない身の上のため、ただされるがままになる

ぶっちゃけ、もう1ヶ月は自慰行為も必要ないほど辛い

「ねぇハルト、気持ちいい?」

「…はぁ…はぁ…お勉強だって言うから…付き合ったんですけど…」

「ゲーチスが、性的な勉強が必要だって言っていたんだ」

ゲーチス様め、何を言っているんだ

性的な勉強じゃなく、跡取り問題と解りやすく伝えれば良いものを

しかしながら、性的な勉強と言われて、どうして同性の部下の尻の穴をほじる事になるのか…

そもそも…

「それは異性で行うもので…んんんっ!」

意見なんて許されない立場であるのを知らしめるように、数本埋まった指をバラバラに動かされて、喘ぎ声に消える

自分の荒い呼吸の隙間を狙ったように、N様の感情の薄い声が

「ハルトじゃなきゃ嫌だもの」

なんて言うから、思わずこんな状況なのに頭を抱えなくなった

教育ミスにも程があるぞ

四つんばいなのを良いことに、そのままうなだれてやろうか

なんて考えていると、N様の気配が背中の真後ろに来る

いつの間にか抜かれていた指の代わりに、大きくて熱いものがあてがわれている…これはマズイ

「ねぇ、入れていいよね」

「ちょっと待て疑問符が無いですけどっひ、いぁぁぁ」

ずぷり。とすっかり慣らされたそこに思い切り突っ込まれ、奥を抉られる

声も出せずにパクパクと間抜けに口を開閉させていると、よしよしと髪を撫でられた

「なんだかんだで、ハルトは抵抗しないで何でもさせてくれるよね」

少し擦れた声が上から落ちてくる

それになんとか

「…俺が…あなたの僕(しもべ)だからですよ…」

と返すと、そうか。と素っ気ない返事

そのまま激しく律動を開始され、吐きたくもない欲を吐き出してしまう

もぅ…本当に限界…

「…初めてのニンゲンのトモダチだもの。僕が性行為を行いたいと思うニンゲンはハルトだけだ」

王様の何の揺らぎも含まれない声が、続く

「これが正しくないって、トモダチから聞いて知っているけど、僕は君が好きなんだ」

ハルトが女の子だったらよかったのに。既成事実でも作って縛り付けられたのに

「ハルトが僕のことをどう思っているかは知らないけど」

答えなど聞いていないように告げられる

俺が何か答える前に、長らく続いた行為による疲れで気を抜けば意識が薄れていく

「俺が女だったら、N様の立場を気にせずキスできたんですけど」

なんとか絞りだした声が聞こえたかは知らないが、背中に優しくキスされた

もし俺が女なら、もし彼が女なら

もしこんな立場が無ければ、もしも、もしも

想像するのはもう疲れた

「俺はN様の部下です。」

だから、あなたの好きにしてください

そう言い逃げして、目を閉じる

体内で、熱いものが弾けた



☆☆
一つの「もしも」が違えば、君に会えなかったかもしれないけど。

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