NOT我慢推奨
うまくいかないことがあると、イライラムカムカして、まわりに八つ当たりしてしまい自己嫌悪…
二度と繰り返さないと決めたのに、つい先程、またやらかしてしまって…
毎回逃げこむのは、人の滅多に居ない洞窟内
人の滅多に居なかった、と言うべきなのか
「また来たんだ、ナガレ」
ヨルノズクに連れてきてもらい、洞窟に入り奥へ進むと
小さな光源の中に浮かび上がる見覚えのある背中がこちらを向いた
「ダイゴさんこそ。…私は一人になりに来たんですけど」
「まぁまぁ、そう言わず。こっちにおいでよ」
スーツ姿なのを厭わず、膝を地面に付けて壁を掘っていた手を止め、人のいい笑顔で手招きしてくる
洞窟に来るにしては随分と軽装備なのを見ると、また仕事を放りだして来たんじゃないのかこの人
「…ヨルノズク、好きにしておいで」
無言で様子を見ていたヨルノズクに声をかけると、洞窟内に飛んでいってしまった
まぁ暗くても目が良いから平気だし、生憎この洞窟内にヨルノズクを倒せるレベルのポケモンなんかいない
「ほら、ナガレ見てよ。今日も沢山見つけたんだよ」
自らの隣をぽんぽんと叩いていたので指示どおり隣に座り、彼の手元を見る
一見してただの石ころから、進化の石、見るからに宝石らしく輝いているものなど、まさに色とりどり。大収穫らしい
土の付いた手で、誇らしげに石を掲げる横顔は歳よりも幾分か若く、少年のようにみえる
「毎日いるんですか」
「今日もナガレがいる気がしたんだ」
「……。」
私が来るたびに、彼が先に待っているために尋ねてみたのだが…一人きりになりたくて来てるって毎回言ってるんだけどな
私がいる気がしたら、そっと仕事に帰ってほしいものだ
仮にもこんなでも、この地方のチャンピオンで副社長なんだぞ、この人
「何も出来ないかもしれないけど、話しくらいなら聞くよ?」
言いながら膝を払って適当な大きさの岩に座り、足を組む
その上に肘を乗せ、さらに手の甲に顎を乗せ、まさに『今から君の話を聞いてあげるよ』スタイル
それがまた珈琲でも渡してやりたいぐらい絵になるから、ちょっぴり腹立たしい
スーツに革靴の似合う、いかにも大人です余裕ですって態度。
地面に座り、彼を見上げながらのここまでの思考、約0.5秒
「…結構です」
「なるほど、ナガレはため込むタイプだ」
否定の言葉を聞いたにもかかわらず、どこか納得したように笑って頷く
「……。」
できたら自己完結しないで欲しいんだけどな
すべて知った風な彼の眩しい笑顔に、ボールから出したマイナンを投げ付ける
楽しそうに飛んでいったマイナンは見事に彼の笑顔に直撃、そのまま張りつく
いつもそのくらいならいいのに。とくぐもった声が聞こえたが、聞こえないふりをしてマイナンを呼ぶ
「爆発させて自己嫌悪するくらいなら、早めに発散させたほうが良いと思うけど…ねぇ?ナガレ」
戻ってきたマイナンを抱き締めると同時に、今度ははっきりと言葉にされ、思わず顔を凝視してしまう
真っすぐとこちらを見つめていたらしく、鋼のように強い瞳と視線が合わさった
包み込むような暖かさに、つい甘えたくなるのは私が子供だからなんだろうか
「僕はここにプライベートで石を取りに来るだけだから、」
時間はいくらでもあるけど?と首を傾げたダイゴさんは、少なくとも誰もが憧れる大人だった
「私、話し下手だし口悪いしつまらないと思うんですけど」
聞いていただけますか。と尋ねると
「よろこんで」
と、ダイゴさんはにっこりと笑って頷いてくれた
☆☆☆
無理しちゃダメでせう?
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[mokuji]
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