意地っ張りたgirl

なんつーことだ。

普段色気もクソもないと上司にからかわれているのに、こんな時ばかり女だって主張してこなくて良いものを…

仕事は最小限の人数で行われているので、穴をあける訳には行かない

ましてや、私は誇り高きバトルサブウェイの戦闘員なんだ

この場所をとって変わりたい人は山ほどいるんだから

だけど…

「あー無理…しんどい怠い辛い」

ガタンゴトンと一定に揺れる座席に座り込んで、心配そうなバシャーモの胸の羽毛を撫でると、隣に座って背中を擦ってくれた

手持ちの優しさに少し楽になった気がする

お客様が来ないのを良いことにお腹を押さえて丸くなると、あわあわして、私のバッグから痛み止めを取り出してくれる

心配性なバシャーモに促され、さらに出てきた美味しい水を受け取り流し込むと頭を撫でられた

「大丈夫、女の子の日だから…明日には治ってるからさ…タブンネ」

月に一度の別に来なくていいイベントが、よりにもよって仕事の邪魔をするんだから女ってのは不利だ。嫌だ。

力だって男性に比べて弱いし、今はそうでも無くなってきたけど、バトルトレインの運転手だって駅員だって戦闘員だって男性が主なんだ

「だからくたばってられるかっての。馬鹿にされてたまるか」

「ですがナガレ様、無理は禁物でございますよ」

「!?」

いつの間にこちらに来ていたのか、車両の連結部の扉を閉めながらノボリさんが歩いてくる

よりにもよって、一番見られたくない人に見られたくない姿を見られるだなんて…

もう何言っているかよくわからないが、慌てて立ち上がり背筋を伸ばす

『いかにも弱ってます私』みたいな態度していたくないし、もししてたらきっとクダリさんなら笑う

いつもの君じゃありえないって、からかわれるだろう

「何の話ですか、ボス」

つんと顎を上げて言い放つ私はいつもの可愛くない、男勝りな私

ノボリさんはしばらくこちらを見つめて目を瞬いていたが、ゆっくりと眉間に皺を寄せて苦笑しながら自らの帽子を手に取った

そしてただそれの行く先を眺めていた私に、ぐっと目深に被せてくる

「わっ」

視界が一気に悪くなって、ノボリさんの姿が見えなくなる

「私にはその痛みは理解できませんが、隣の車両から見ていてとても辛そうでしたので」

これを。と、帽子を上げて広がった視界にヒトモシ柄の膝掛けが差し出される

「頑張るいつものナガレ様のお姿も素敵でございますが」

たまには頼ってくださいまし

問答無用で、様子を伺っていたバシャーモの隣に座らされ、もう一度帽子を深く被せられる

「しばらく休んでくださいまし」

女性を助けるのが男性の仕事でございます。なんて格好いい事言うから、フェミニストと呟くと頬を力一杯引かれた

「冗談ですって」

「私が直接お腹を暖めて差し上げましょうか?」

それはさすがに恥ずかしくて死にますと伝えると、なら早くお休みください。だって

お言葉に甘えて、バシャーモにもたれて目を瞑る

先ほど飲んだ薬の副作用もあるのか、すぐに眠気に襲わる

そーいや、なんでノボリさんはヒトモシ柄の膝掛けなんて持ってたんだろうか



☆☆☆
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