終演と開演の間
アロエさんに挨拶して、奥の図書館のようになっている部屋に入る
「やぁやぁ、ジムリーダーさん、今日もお勉強ですか?」
本に齧り付くようにしていた幼なじみの背中に声をかけると、あっちに行ってと無下に追い払われる
眼鏡やめたんだと問えばチェレンは、バトルの邪魔だったからねとだけの答えを返す
相変わらずつれないの
緊張してるねーとオタマロに言うと、マローと鳴きながら頭上を跳ねた
彼は今日から正式にジムシリーダーになるんだ
頭が良くて教え上手で、要領が良い彼は先生になると思っていたけど
「今日さ、うちんとこの近所のガキが、ベルちゃんからポケモン貰ったってさ」
ベルちゃんはアララギ博士の助手になった
あの箱入り娘が、立派になったものだ
旅と二年の歳月は、伊達に人を成長させた訳ではない
みんなの背中は、遠ざかるばかりだ
感慨深いねぇ、まったく
「ナガレは、Nを見つけたの?」
唐突に、本から顔も上げずに尋ねられた一言は、見事に心臓のど真ん中を抉りとった。急所に当たった!効果抜群だ!
私は無言。つまりはそれが答え
オタマロだけがマロマロと何かを訴えるように鳴く
「いいからオタマロ君は黙ってなさぁい」
ふざけた注意にマロッ!と律儀に鳴いて、口を閉じるオタマロの頭を撫でる
賢い子だ
「チェレン、最近ねぇ、プラズマ団がまた動いてるんだと」
N派とゲーチス派に別れて色々やってんだとか
「また、誰かの物語がはじまるんだねぇ」
オタマロを頭から腕に抱えなおすと、チェレンが少しだけこちらを一瞥した
「僕はジムリーダーになる。ベルは助手になった。ナガレはどうするつもり?」
いつまで過去の背中を追い回しているのかと、チェレンの背中は言っている
「そーだな。そろそろ、諦めたほうが良いとは思うんだけどね…」
それから、二人とも無言。つまりはそれが答え
先に進む幼なじみの背中を眺めながら、過去に別れた背中を探す
「滑稽だよね、チェレン」
止めてくれないの?と聞くと、幼なじみのやることぐらい把握済みとだけ
まったく、つれないの
そう思いつつ、口の端が上がるのは、なんなんだろうか
「行こうかオタマロ」
踵返した背中に、チェレンの視線が刺さるが、振り返らない
外で待っていたゼクロムの背中によじ登り、空に走る
「あーあ、止めてもらえたら、止めちゃおうかと思ったのに」
ナガレの好きにしなよ。終わったら帰っておいでと、聞こえたのは多分気のせい
☆☆☆
だってだってBW2でまだ会えてないなんて言うからぁ…
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