ボールと想い (風円)


俺と円堂は幼なじみであり親友でもある。
だから、俺は円堂を信頼している。
同じように、円堂も俺を信頼してくれている。

だけど俺は…
円堂のことが好きだ。

この気持ちを伝えられたら
どれだけ気が楽になることだろう。


「風丸っ!」

「ん?ああ、円堂か。どうした?」

「今日さ、久しぶりに2人で河川敷で練習しないか?」

「おっ、いいな。やるか!」

「おう!じゃあ、部活終わったら行こうぜっ」

「ああ。それじゃ、またあとでな。」


ただこれだけの会話なのに
俺の心臓はバクバクと騒ぎ出す。

俺はいったいどうすればいいんだろう…



そんな気持ちのまま、部活に出て、いつものように特訓を終えた俺は、円堂と一緒にいつもの河川敷に来ていた。


「なあ、風丸。」

「ん?」

「こうやってボール蹴ってるとさ、相手の気持ちまで伝わってくるよな!」

「相手の気持ち…」

「ああ!このボールから、サッカーが好きだ、楽しいって気持ちが伝わってくるんだ!たとえそれがどんな相手でも。」

「そう…かもな」

「だからサッカーはいいんだよな…俺、サッカーが大好きだ!」


相手の気持ちがボールを通じて伝わる。
じゃあ、俺の、円堂に対するこの気持ちも―――


円堂。お前が好きなんだ…。

こんな気持ちを込めて円堂にパスを送る。
少しでも気づいてもらいたかった。

「風丸…お前最近様子変じゃないか?」

「……………。」

「俺、何かしたか?」

「……………。」

「おい、何か答え…」

「お前に何がわかるんだよ…」

「え?」

「俺がお前を…円堂をどんな気持ちで見てきたのか、お前にわかるのかよ!」


なんでこんなに怒ってるのか、感情のコントロールができないのか、俺自信よくわからなかった。ただ、円堂に気づいてほしい一心で…


「風丸…」

「………ごめん、円堂。俺――――」

「お前の気持ち、ちゃんと伝わってるよ。」

「円…堂?」

「このボールから、好きだって。ちゃんと伝わったぜ!」

「違っ…!俺はサッカーもだけど円堂がっ!」

「わかってる。俺だって…風丸が好きなんだから。」

「円堂が…俺を…?」

「俺はみんな大好きだ。豪炎寺も、鬼道も、半田も、染岡も。だけど、風丸。お前だけは特別なんだ!」


円堂が俺と同じ気持ちでいてくれたことが、素直に嬉しかった。

俺にとって円堂は特別な人で、円堂にとって俺は特別。

ずっと願いつづけてきたことが今、やっと叶ったんだ。


ボールから伝わる円堂の想い。
ボールから伝える俺の気持ち。


円堂。俺はきっと、何があってもお前を信じつづける。
お前が俺を信じてくれるから。お前が蹴るボールから、お前の気持ちが伝わってくるから。だから、俺も伝えるよ。


お前が好きだって。





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