どんなに足掻いても、敵わないことくらいわかってる。
好きになってどれだけたった、とかそんなのは関係ない。相手が振り向いてくれなきゃ意味がない。
俺には決して向けられることのないであろう笑顔。
俺には決して聞くことのないであろう優しい声。
全て、大阪・四天宝寺の白石蔵之介とかいう人に向けてのものであって、俺にたいしてのものではない。
「ちょっと、越前?」
「なんスか。」
「離して。」
「なんで?」
離したらアンタはあいつのとこに行っちゃうでしょ。
「えちぜっ…!!」
今すぐに俺のものにしたい。このままキスしてるところを白石さんに見せ付けてやりたい。
でも。
「…っ!!」
アンタの涙を見ちゃうと、そんなことできなくなる。
「不二先輩……ごめん…」
やっぱり、アンタの前だと思い通りにできなくなる。
頼むから泣き止んでよ。頼むから俺を見てよ。
しばらくして、落ち着いたのか不二先輩は俺に、泣いたりしてごめん。だなんて謝りはじめた。
きっとアンタは優しい人だから、こんな俺を許してくれるどころか、謝ってくれるんだ。
「ねえ、不二先輩。」
「なんだい?」
これが、最後の悪あがき。
「最後に…キスしてもいいっスか…」
「え…」
「お願いします、不二先輩。」
これが、本当に最後。
最後にするから、答えてよ。
ねえ、どうしたら振り向いてくれる?
-end-