ずっとずっと大好きだったあの曲。兄ちゃんが教えてくれたあの曲。
いや、正確に言えば兄ちゃんが好きだから好きになった曲かもしれない。でも、そんなことどうでもいい。
サッカー以外にも、大好きな兄ちゃんとの共通点ができたことが嬉しくて、携帯の着信メロディーを兄ちゃんだけ個別登録をした。
その曲がなる度に兄ちゃんだって少し心が躍ってた。
でも、それを最後に聴いたのは確かそんなに前の出来事ではない。
俺が部活を辞めるか辞めないか悩んでいた頃、兄ちゃんからメールが来た。そっけなく、【諦めるな。お前ならできるから。】としか書いてなかったんだけど。
俺の兄ちゃんからの受信ボックスは、その日で止まっている。
もうどのくらいあの曲を聴いていないのだろうか。
「兄ちゃん、酷いよ。」
俺を置いていくなんて。
もっともっと教えて欲しかった。サッカーも、この曲を歌う人達のことも。
そんなことを考えていたら、あの日のこと―俺兄ちゃんにこの曲を教えてもらった日のことを思い出した。
そうだ、この曲のタイトルは【ニベラ】って言うんだったっけ。すごい綺麗な声の女性の歌。確か意味が合ったはずだけど、思い出せない。
そういやあの日、兄ちゃんが「もし俺がいなくなっても、きっと会えるから大丈夫。」とか矛盾したこと言ってた。何か関係があるのかな。
ふと携帯を見つめる。祐介とか、セブンとかと連絡を取るから着信メロディーは毎日のように鳴る。
でも、あの着信メロディーはもう鳴ることはない。
もう鳴ることのない着信メロディー。
この曲の意味は、なんだったっけ。
-end-
ちなみに、ニベラとは花の名前です。花言葉は[夢で逢いましょう。]だそうです。