一輪の花 (傑荒)



あいつがいなくなって、4回目の夏。
なんだかあっという間に時が過ぎてしまって、もう4年も経つなんて実感がない。


今までずっと忙しくて墓参りなんてちゃんと行ってやれなかったな。せっかくお盆なんだし、墓参りにでも行くか、と思った俺は家を出て歩き始めた。


歩いていると、どの風景にも傑との思い出が詰まっていてそこを通るたび記憶が鮮明に蘇ってきた。


とある公園の前を通りすぎようとしたとき、俺の頭の中に、傑がまだ生きていたときのある記憶が走馬灯のように蘇った。





『なあ、お前は大人になってもサッカー続けるのか?』

『なんだよいきなり。当たり前だろ?』

『…以外。荒木のことだからやめるのかと思ってた。』

『あのな、お前はいったい俺にどんなイメージがあるんだよ。』

『悪い、冗談だよ冗談。』

『まったく…まあ、俺がサッカーやめるそのときは、きっと傑にも負けない一流プレイヤーになってるよ。』

『言ってくれるじゃん。』

『俺は本当のことしか言わねえよ。』



そんな会話をこの公園でしたっけ、なんて思いながらまた歩きだした。

そうだ、せっかくだからなんか買ってやろう。あいつ、甘い物好きだったよな…よくプリン食ってたっけ。


いろんなことを考えてるうちに、目的地に着いた。
買ってきたプリンをお供えする。


「あれから4年だってな。まったく、早過ぎて実感ねえよ。」

「なあ、傑。俺ちゃんと一流プレイヤーになるからさ。見ててくれよな。」


「………お前に逢いたいよ…傑。」

『おっ、プリンじゃねえか。』

「え?傑?」

『荒木、サンキューな。』

「サンキューってお前…本当に傑なのか?」

『ここは俺の墓だぞ?俺以外誰がいるんだよ。』

「いや、だってお前4年前に…」

『荒木に逢いたくてかえってきた。』

「………傑」

『お前が来てくれるの、ずっと待ってた。』

「悪ィ…」


これは夢なのだろうか。
今、目の前に俺が一番逢いたくて、一番大好きな奴がいる。


「これが夢なのか現実なのかわかんねえけど…嬉しい。」

『俺もだよ、荒木。』


このまま時が止まればいい。
ずっと傑の隣にいたい。

でも。


『少しだけだったけど、お前の顔が見れて嬉しかったよ。』

「俺もだよ、傑。」

『最後に聞いてほしいんだ。』

「なんだよ改まって。」

『…………好きだよ。』


その瞬間、ぶわっと風が吹いてきた。風が止んだときにはもう、傑はいなかった。


「なんだよ、自分だけ言いたいこといいやがって…」


さっきまで傑がいたところに、一輪の花が落ちていた。

「お前はずるいよ、傑。」


その花を拾って、空に向かってつぶやく。

「俺も好きだよ、馬鹿。」


夢でも幻でも構わない。ただ、傑に逢えたことがたまらなく嬉しい。


「ありがとう、傑。」



-end-






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