今日から始まった修学旅行。バスの中は相変わらずうるさくて嫌んなっちまう。
そんな俺の隣は案の定誰もいない。まあ、そんなことはどうでもいい。俺は孤独でいいんだ。
なのに、なのにコイツだけは。
「なあ、不動。隣いいか?」
「……………。」
シカトだシカト。こういうのはシカトすればどうにかなる。
そう思っていたら、コイツはいきなり隣に座ってきやがった。
「なあ、俺何にも言ってねぇんだけど。」
「返事がないってことは、好きにしていいってことだろう?」
「ちっ…相変わらずうぜぇ。」
「何とでも言え。」
コイツだけは、鬼道だけはやけに俺に構ってくる。頼むから一人にしてくれよ。お前みたいなお坊ちゃんに俺の苦しみがわかるわけねぇんだ。だから早く消えてくれ。
しばらくして、バスは目的地についたらしい。そんなことはどうでもいいから、早く一人にしてほしかった。
だけど。俺の部屋は何故か鬼道と一緒だった。
最悪だ、なんて思いながら無言で部屋に入る。他の奴らは3人1部屋なのに、何で俺らだけ2人1部屋なんだよ…
「不動。」
「あ?」
「お前はなぜ、一人になろうとする?」
「はぁ?お前には関係ねぇだろ。」
「答えろ。」
「なんだっていいだろ。一人が好きなんだよ。」
「嘘だ。」
なんだコイツ。うぜぇ。
「答えろ、不動。」
「うるせぇな!テメェには関係ねぇだろうが!!さっきからうぜぇんだよ!頼むから消えてくれよ…っ!!」
なぜか俺は叫んでいた。鬼道を突き放すように。
だけどコイツは、静かに俺を抱きしめた。
「なぁ、俺が今言ったことわかんねぇの?」
「あまり自分を責めるな…。俺も辛くなる。」
「意味わかんねぇよ。お前なんかに俺がどんな思いをしてきたかなんて、わかるわけねぇだろ…」
「俺にはお前の辛さはわからない。だが、お前にも俺の辛さはわからないだろ。」
「何が言いてぇんだよ。」
「俺は、幼い頃に…両親を亡くした…。」
「…………。」
「だから、お前を放っておけない。」
「同情なんかいらねえよ……」
「同情ではない。俺はお前を受け入れる。だから、お前も俺を受け入れろ。」
真っ直ぐ見つめてくる鬼道の目は、とても綺麗で嘘をついているようにはとても見えなかった。
コイツになら、わかってもらえる。
俺はそう思った。
「………ありがとよ。」
-end-