たった1つの (吉良基山)




小さい時に見た、何気ない夢。

「やあ、ヒロト。」

「君は…誰?」

「僕?僕は―――だよ。」

「え?良く聞こえなかったよ…」

「ふふ、大丈夫。そのうちわかるさ。それより、ホラ。行こうか。」

「え?行くってどこに?あ!待って!!」


先に行く彼を追いかける。誰かはわからないけど、すごい懐かしい感じがする。


「ホラ、サッカーやろう?」


そう言って僕にサッカーボールを差し出す。


「君も…サッカー好きなの?」

「サッカー…好きだよ。大好きさ…。」


…好きなのに、なんでそんな悲しい顔をするの?好きなら、もっと楽しそうに、好きならもっと笑うはずじゃないの?

その時の彼の顔の意味が、僕にはわからなかった。


「ねえ、ヒロト。」


ふいに彼が僕の名前を呼んだ。


「例え遥か離れていても、悲しい絆だったとしても。僕たちは一緒だよ。二人で一つ。だから、絶対一人だと思わないで。」

「う、うん。」

「僕たちは一緒。忘れないでね。」


そう言った彼の顔はどこか悲しげで、まるで僕の未来を知っているかのようだった。



あれから、何年が過ぎたのだろう。


「さあ、ヒロト。行くのです。」

「…はい。父さん。」


あの時夢に出てきた彼は、父さんの本当の息子であり、俺の兄さんだったのだろう。

もしも今。彼が、吉良ヒロトが生きていたなら。僕たちの絆は……。


あの時の約束は、ちゃんと覚えている。間違った道に進もうとしていることも、わかってる。
でも、今だけは。大切な笑顔の為に、たった1つの希望の光になれるなら。


「ジェネシス、出動します。」


すべては、愛する父さんの為に。




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