最後の望み (天拓)





部活が終わったあとのこと。オレの目の前には、今の状況を理解できていないキャプテンが立っていた。「もう一度言ってくれないか?」なんて言いたげな顔をして、口をパクパクさせている。 ああ、なんて可愛いんだろう。


「キャプテン、オレ本気です。本気でキャプテンが好きなんです。」

「それは、チームの仲間として…か?」

「それもそうですけど…そういう意味じゃなくて。」


そう言うとますますキャプテンは混乱する。いい加減、気づいてくれてもいいと思うんだけど。 なんて思いながら、オレは考え込むキャプテンに一歩、また一歩と歩みよる。


「理解、してくれましたか?」

「ちょ…天馬近い……」


なんて言いながら顔を赤くして照れるキャプテンもまた可愛い。


「キャプテン…」

「あ………」



沈黙が部室を覆う。

どのくらい経ったのだろうか。やっとキャプテンが口を開いた。


「ごめん、天馬。俺は…」

「霧野センパイのことですよね。」

「えっ」

「俺、知ってますよ。キャプテンが霧野センパイのことを好きなの。」


キャプテンは、顔を真っ赤にしながら「何で?」と言いたそうな顔をしていた。
そんなの、わかるに決まってるじゃないか。


「オレ、いつもキャプテンを見てました。でも、キャプテンの視線の先にはオレはいなくて、いつも霧野センパイなんです。」


だから、キャプテンと霧野センパイが付き合う前にって思った結果、こうなってしまった。


「キャプテン。」

「……………。」

「………拓人さん。」

「………………。」

「応えてくださいよ、拓人さん…」

「ごめん。俺は、お前の言う通り霧野が好きなんだ。だから…」


この言葉を聞いても、ショックじゃなかった。だって、わかりきってたことだから。でも、オレにも、少しだけ望みがあるならば。最後の望みを。




「キャプテン、1つだけ、いいですか?」




-end-








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