君の隣(沖斎)



『うわ…39度もある』

今日の巡察は、僕の一番組が担当だったのに組長である僕が高熱で寝込んでるせいで代わりに三番組が担当してくれているらしい。
自分でも情けないと思う。組長が高熱で寝込むなんてね。

『三番組ってことはー…一くんにまた迷惑かけちゃったな。』

あとで一くんにお礼しなきゃ。何がいいかな、なんて考えていたら襖の向こう側から声がした。


『総司、入るぞ。』


そういって現れたのが一くん。

『巡察、終わったの?』

『ああ。今日も京の町はいつもと変わりなかった。それより総司。あんたは大丈夫なのか?』

『うん、大丈夫だよ。だいぶ楽になったみたい…』

そういうと一くんは、僕の顔をじっと見つめてきた。

『あの、一くん?近いんだけど。』

『何故だ。』

『へ?』

『何故嘘をつくのだ、と聞いている。』

『嘘なんかついてないよ。』

『あんたはいつもそうだ。今だって全然大丈夫そうには見えぬ。俺にすら本音を隠すのか?』

『あはは、参ったなあ。一くんは何でもお見通しなんだね。』

そう。一くんは、僕がつらいとき、苦しいときいつも隣にいてくれる。いつも傍にいてくれる。甘えさせてくれるんだ。


『一くん、僕ねえ。怖いんだ。』

『何がだ?』

『僕のこの病気。もうこのまま戦えないんじゃないか。みんなと、一くんと一緒にいられないんじゃないかって思うと、とても怖いんだ。』


この高熱は、きっと僕の【労咳】から来ているのだろう。
松本先生に診察してもらって発覚した不治の病だ。


『僕がここにいるってことは、みんなの足を引っ張ってるんじゃないかな…』

『そんなことはない。』

『一くん?』

『近藤さんや副長、幹部のみんな、総司の回復を願っている。それに―…』

『それに?』

『俺は、俺の背中を預けたいのは総司だけだからな。回復してくれぬと困る。』

『そう…だね。ありがとう、一くん。』



僕はここにいてもいいんだ。
役立たずなんかじゃない。
気づかせてくれるのはいつも一くんだ。
不器用で真面目で頑固だけど、誰よりも僕を知っていて僕をわかってくれる。

そんな君の優しさに触れながら、僕はまた眠りについた。




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