私はこの男が嫌いだ。
チューリップみたいな髪型をしているうえに、やたら私に突っ掛かってきて五月蝿い。
私はこの男が大嫌いだ。
「おい、ガゼル!」
「…なんのようだ?」
「お前、今日何か用事あんのかよ。」
「あったらなんだというのだ。お前には関係ないだろう。」
「なんだよその言い方!」
「本当のことを言ったまでだ。」
「まあいい…。それより、遊園地行かないか?」
なぜ私がこんな奴と遊園地に行かねばならんのだ。
もうわけがわからない。こいつは何がしたいんだ。
「断る。ヒートやネッパーと行けばいいだろう。」
「お前じゃなきゃ駄目なんだよ!ったくめんどくせぇな…いいから来いよ。」
めんどくさいのはお前だ。
と心の中で反論し、私はバーンに腕を引っ張られ、遊園地に来た。
掴まれていた腕より、顔が熱いのはきっと気のせいだろう。
「来たのはいいが、何をするんだ。」
「何って…そりゃ遊ぶしかねぇだろ。とりあえず…アレとアレと…ホラ、さっさと行くぞ。」
そういってまた私の腕を掴み歩きはじめた。
ドクン、と心臓が跳ねたのは、きっといきなり掴まれたから。顔が熱く感じるのは、きっと人混みがすごいから。
それ以外何があるというのだ。
自分に言い聞かせるように心の中で呟く。
「ガゼルっ!」
ボーッと歩いていたら急にバーンに引き寄せられた。
「な、何をするのだ!」
「何ボーッとしてんだよ!お前今ぶつかるところだったぜ?」
「え…あ……すまない。」
このドキドキは抱きしめられていたからじゃない。急に引き寄せられたからだ。
本当は自分の気持ちに気づいてるのかもしれない。ただ、気づいてないフリをしてるだけ。
「次、気をつけろよ。」
「……ああ。」
しばらくたったのに、なぜかバーンの顔を直視できない。
そんななか、観覧車は私の乗る順番になった。
「そ、そういえば今日はどうしたのだ?急に遊園地など…」
「ん?ああ、だって今日はお前の誕生日だろ。」
「私の…誕生日」
「おめでとう、ガゼル。」
自分でも忘れていたことをバーンが覚えているなんて。
また私の心臓がバクバク音をたてている。
私はこの男が嫌い、大嫌い。なはずだった。
なのに、どうして。
-end-