「夕陽さーん」

佐助は只今キッチンで料理中。
先程まで順調に進んでいた料理だったが、
普段私が使っていない現代器具のフライパンやら鍋やらを使いこなし良い匂いが漂ってきた所で佐助の腕の動きが止まったのだ。

「なんだい?」
「塩はー?」
「手前の棚の上から2段目の右から2つめだ。」
「あーあったあった。有難う。」

塩か。塩も大分使ってないなあ。
まず私は料理をしないからなあ。佐助を見習おうにもレベルがちょっと初心者には真似できないレベルだ。
…本当に男だったんだろうか。
いや、幸村が言うにはそうなのだから、そうなのだと思う。

「いや、気にするでない。こちらこそ来る度にご飯を作って貰って済まないな。」
「あー気にしないでよ。来たら頼るの夕陽さんの所しかないし。それに衣食住まで提供して貰ってるしね。もっと言うならそんな細くて夕陽さんちゃんと食べてるのか心配だし…。」

…本当に男だったんだろうか。
いや、幸村が言うにはそうなのだから、そうなのだと思う。多分。

「佐助。」
「ん?なにそんな改まった顔しちゃって…。」
鍋の蓋を閉めてからこちらに向き直る。少し傾けた首がなんともかわいらしいと思った。女の私が何故女にときめくかと言うと、それぐらいに可愛かったからだ。

「良い嫁になるな。」
「うん。殴るよ。」
「いや、むしろ私の嫁になってくれ。」
「あぁ、埋められたい?」

笑顔のままで殺意ある言葉を言われてしまった。

「私は本気なんだがな。」
「今は曲がりなりにも女の子同士でしょ。」
「心は男なんだろ?問題ない。」

溜息を隠さず盛大に吐いた佐助はまた料理に取り掛かる。
コンロの火を弱くして言って、ぽつんと呟く。

「あるでしょ。イロイロと。」

その小さい声を拾った私の耳。
口端を上げて小さく笑う。

「心配ない。私は佐助の作ったみそ汁が飲めればそれで。」
「………。」

反応がない。流石に引いてしまったのだろうか。佐助はくるりと背をこちら側に向けてしまった。仕方ないのでソファから立ち上がり佐助の側に歩み寄ろうとする。
しかし前に聞いた通り、流石忍と言ったところだろうか。私が腰を上げた瞬間に言葉がかかる。

「今来ないでね。」
「…?何故だか聞いても良いだろうか」
「だめ」

来ないでと言われても駄目と言われても歩みを止めず、私は進み、佐助の背後に立つ。生憎私の家は古風なものなどではなく、普通にマンションなため屋根裏など勿論ない。背後に経ってしまえば縦に長いキッチンでは逃げ場がない。

「もしかして照れてる?」
「……。」
「顔見て良い?」
「だめ!」

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100219

あかいから


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