「まーた旦那ってば夕飯の摘み食いしてさあ…」




ねえ、聞いてる?」

彼女に尋ねるとずれていた視線を俺に向け直して 聞いてるよ、と微笑む。
少し納得できなくて頬を膨らませた。

彼女は俺のその様子に口端を上げて笑った。
俺はその口端に親指を這わせた。
彼女の笑みが消える。

視界が桃色になる。
彼女の目には俺しか映ってない。

「ねえ、知ってた?」

彼女が俺に尋ねる。俺は なにを?と聞き返す。

「私、貴方の夢なのよ。」

ああ、知ってるとも。
これは俺が作りだしたんだ。

君の、幻を追っかけて、
君を粉々に割った俺は、それをまた拾い集めたんだ。


光る君の口端にはまだ俺の親指がある。

まだ、ある。

ま だ、ある


ま だ あ 、る


まだ、まだ、行かないで。

光る君は消える。
いつもどおり、消える。夕日が沈むとともに君も消える。


愛してる、本当だよ。
(だから帰ってきて)



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100204



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