「遊星・・・」

声が聞こえる。
口下手な俺に呆れもせずに何度でも呼んでくれる声。

ぽつりと、彼の名前を小さく口にする。
それだけでも呼んだのだと分かってくれたようで、目が合うとにやりと擬音がつきそうなくらい笑う。

そんな行為だけでも嬉しくなると同時に恥ずかしくなり、顔を逸らしてしまったが、その行動が更に喜ばせることになる。俺は顔を逸らしたせいで彼の動く気配は分かっても何の為に動いたのかは分からない。
なんだ、と思考を巡らせる暇も無く彼に優しく抱き締められる。


ゆうせい


耳元で囁くように呟かれれば更に顔は熱くなっていく。
その反応に満足した様子で彼は抱き締める腕を弱くすることは無かったが、俺の反応で遊んでいたのは止まる。
何をするでも無く、何かを話す訳でも無く、ただ穏やかな時間が流れていく。
とても、心地よい時間であった。しかし、何故いきなりこんなことをしたんだろうかとちょっとした疑問が頭の中で渦を巻く。

「遊星、外を見てみるが良い。」

彼に言われ外を見ればひらひらと舞う純白の雪。
何故か日付を確認してみればクリスマス。あぁ、これはホワイトクリスマスという奴か
よく分からない納得を一人でしていると、彼が懐から取り出した小さな箱。

箱をてのひらに置かれ、困惑してしまう。何度も箱と彼を見返していると「開けてみるが良い」との言葉。言われた通りに綺麗に包装されたそれを開くと、


中には、無駄な装飾が無いにも関わらず、どこか気品を漂わせる指輪が入っていた。

「お前は少しも気を遣わぬからな。これでも持っていれば良い。」

不器用ながらも様々な思いを感じさせるその言葉に暖かい気持ちとなる。

しかし、彼が素敵なものを用意していても、肝心の俺は何も用意していない。ましてや、今日という日の存在をすっかり忘れていたのだ。
今更ながら最近、徹夜ばかりの自分を悔やんでいると
「お前は何も気にしなくても良い。これはキングたる俺がお前にしてやりたかったことなのだ。」
と、言葉を掛けられる。
その言葉に改めて彼に惚れ直し、好きになったのが彼で良かったという思いが増す。


そして俺はお礼代わりに彼の頬に触れるだけだがキスでも送ってやろう





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