『善吉ちゃん』
あぁ、忌ま忌ましい声がする。
『善吉ちゃん、善吉ちゃん善吉ちゃん善吉ちゃん善吉ちゃん』
呼ばれても返事なんてしてやらない。
だって俺はこいつが嫌いなのだから
こいつはいつも嘘ばかり
嘘ばかりだから、こんな縋る様に俺の名前を呼ぶのもきっと、嘘なんだ。
『ねぇ、善吉、ちゃん……』
なんで、そんなに悲しそうに俺を呼ぶんだよ。
あんたはうそつきなんだろ
なのに、なんで
「ぜんきちちゃん」
「あんたはうそつきなんだろう?」
『確かに僕は嘘つきだけど』
『善吉ちゃんには、嘘をつきたくないんだ』
あぁ、どうすれば良いのだろうか
9/1