※企み続き


歪んだ笑み



彼、平和島静雄はふと意識が浮上した。
自身は目を開けているつもりなのに視界が暗いままなのは目隠しをされているのだろうと、何となく理解し、それ以外に自分が置かれている状況を理解しようと腕を動かそうとしても後ろ手で縛られ動きそうに思えない上に
足は枷を嵌められて動く気配はするが立てる程の長さはない為に鎖の音が虚しく響くだけであった。
少し寒いと感じたのは自分は服を纏っていないからなのであろう。
おまけに自身の唯一の武器である力が出ない。
どうしてこうなったのか、思い出そうとすると初めに浮かんだのは宿敵である奴の歪んだ笑み。

その笑みを思い出して意識を失う前の事を思い出す。
段々と奴に対して苛立ちが積もっていくと

「シズちゃん、やっと起きたんだぁ。薬が強すぎたのか心配になっちゃったんだ
シズちゃんに普通の薬なんて効かないだろうから特別に量を倍にしたんだから」

憎たらしい声が聞こえた。

「臨也、さっさとコレを解きやがれ!そして死ね!」

「う〜ん。それを解くのも死ぬのも御免だよ」

あっけらかんと答える奴に更に苛立つ。
何とか抜け出せないか動こうとするが薬のせいで人以下になってしまった力程度では鎖の音が響くだけ

「やっと……手に入れたよ、シズちゃん。
シズちゃんはもう俺のモノなんだ。
これから俺の事しか考えられなくしてあげる。
嬉しい?嬉しいでしょ、シズちゃん」

「ふざけるな、嬉しい訳ねぇだろ」

彼は目の前の男に恐怖を感じた。
目隠しのせいで顔を見えない事など関係なしに臨也が纏う雰囲気に畏怖したのだ。
その恐怖から彼は小さく震えてしまう。

「あは、どうしたのシズちゃん…嬉し過ぎて震えているの?それともこれから俺がする行為を期待してるの?嬉しいなぁ……可愛いよシズちゃん」

「ど、っちも違げぇし…可愛くなんかねぇ」

くす、そう笑う声が聞こえたと同時に臨也は静雄に触れる。

くすぐったいほどに柔らかな触り方だが確実に彼に変化をもたらす。

「っく、あっ」

自身の口から発せられたとは思えないような高い声。

「目隠しをしてると媚薬が効いてきたのもあるだろうけど、シズちゃんって感度良いんだね〜
良い声」

そういえば身体が熱くだるい。
おまけに意識もはっきりとはしない。

だが先程の声を指摘され羞恥の念に駆られ、更に身体が熱くなる。

もう、あの声を出さないようにと唇をきつく噛む。

「シズちゃん?声を出さない何て無駄だよ」

と、キスをされる。
深く長く噛み付くようなキスをされながらも臨也の手は動く。

段々と彼の意識が彷彿としてくる。
臨也の事を憎みながらも逆らえない自分。
そんな自分に恨みを募らせながら彼の理性は機能を果たさなくなった。


そんな静雄を見て臨也は更に歪んだ笑みを浮かべるのだった。


―これで本当に俺のモノだね、シズちゃん―






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