人が知ってる普通の俺
普通知らない本当の俺
さぁ、舞台上に上がる俺はどっち





茶番の舞台は箱庭学園、
本日は生徒会会長の選挙だ。

「世界は平凡か?
未来は退屈か?
現実は適当か?
安心しろ、それでも生きることは劇的だ。」

俺が幼少より聴き続けている声が体育館内に響く。
人々は演説している彼女から目を離さないでいる。それ程までに彼女の演説が素晴らしいだろう。
いや、彼女が纏っている雰囲気から声、容姿等の全てが人を魅了するのだろう。
これは凄い結果になりそうだ。そう、嘲笑った(ワラッタ)俺は事を受け流す。

「人吉、どーするの?」

「何を?」

「生徒会に入るかどうかって事だよ、人吉も大変だねー」

「誘われているが、これ以上あいつに振り回されてたまるかっての・・・・・俺は絶対!生徒会には入らない!!」

同じクラスの不知火に含みのある言い回しで問われる。
残念だったな不知火。俺は絶対入らないからな

「そう、つれないことを言うものではないぞ、善吉よ」

背後に、先程まで響いていた声がした。
同時に頭をわしづかみにされる。

「ちょっとまて、引きずるな、おい!?」







「・・・・・・ったく、普通に連れて来ることができねーのかよ、生徒会長さん」

そうして生徒会室に連行された俺は言葉に厭味を含みつつ、痛む首に手をあてる。

「ふん、私の誘いをすげなくし続ける貴様が悪い。それによそよそしい呼び方をするものではないぞ、昔のようにめだかちゃんと呼ぶがよい!」

「だから断ってる理由はお前が厄介事も全て俺を巻き込むからだろ」

実際俺には放課後暇などないのだ。

「つれないな、善吉。しかし、何時も言っておるだろう。私に貴様、善吉が必要だから傍に居て欲しいとな。」

何でこいつは恥ずかしい台詞を真顔で、しかも淡々と言えるのだろうか。

「で、善吉よ。先程、目安箱に第一号の投書があったのだ。ついてくるだろう。」

「俺に拒否権は?」

「決定事項だ。行くぞ、善吉」

俺の意思が関係なしに話が纏まってってやがる。相変わらずだなと変わらない彼女に連れられる。
って、どこに行くんだよ!






彼女に連れられて来たのは剣道場。そこには不良が群がっていた。

「一年十三組生徒会執行部会長職黒神めだかだ。目安箱への投書に基づき生徒会を執行する!」

彼女が宣言すると不良が彼女に近付き木刀を向ける。
だが、彼女の行った(オコナッタ)無刀取りに畏怖したのか、全員で彼女を囲う。
しかし残念。異常に少しでも恐怖を感じたのなら勝者など分かりきっている。

彼女の定番の『上から性善説』が出たならば俺に出番はないだろうと結論付け、俺は音もなく剣道場を後にする。
部活動中の生徒の掛け声が響いているがそれ以外に人気はない。


「善吉、君は生徒会に入ったのかい?
断るにはいっその事、十三組に編入すれば良いんじゃないのか」

だが、物陰から俺に声を掛ける人。

「宗像先輩、俺は普通にしか見えないんですよ。今、編入すれば目立つじゃないですか。」

「生徒会長といる時点で目立っているよ、善吉。」

分かってないですね、生徒会は会長にしか目がいかないから逆に目立たないじゃないですか。
そう目だけで訴えると彼は呆れたように溜息一つ。

そして、

「まぁ良いよ。君がちゃんと参加してくれるなら生徒会所属も許可するって、理事長からの言付けだよ。」

「わざわざ伝えに来てくれたんですか。有難うございます。」

「普通で笑わないでくれないか、僕は君の素顔を見に来たんだから」

「それはすみませんでした。ま、今日は大人しく帰りますよ。さようなら、先輩。」

「またね、善吉」


─彼女が舞台にあがった
自分は結末をどのように迎えるか思考を巡らす。
異常な劇は始まったばかり─


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