落ちる雫、伝わる頬
自分一人の世界
近づいて来る音


still


「善吉」

後ろから声がする。
全身が重く顔だけ声の方向に動かす。

「あぁ、宗像先輩」

来てたんですか、という俺の言葉は彼の驚いた顔を見て飲み込んでしまった。

「善吉、君泣いていたのかい?」

「え、泣いて?」

「だって、ほら」

そういって宗像先輩は
俺の頬を伝う雫を掬い俺に見せる。

あぁ、先程から零れていた雫はこれだったのだと理解する。
これは涙?

「俺も、涙を流すんですね。」

不意に出た小さな言葉。
人が泣くのは理解していたが自分も泣くのだと
初めて知る。
この言葉も近くにいる先輩には聞こえたらしく

「当たり前だろ」

と笑いかけてくれる。
その笑みに心は少し楽になるが身体はそうはいかないらしく倒れる身体。

意識ははっきりとしているが身体は全く動かない。
倒れたら痛いんだろうか、と楽観的に考えていたら自分を支える大きな手。

宗像先輩は自分に手を差し延べている。
では、誰?

と、視線を支えている人物に移すとともに、

「大丈夫か、ヒトキチ」

と、威圧感のある何時もの声ではなく
気遣かってくれている優しい声が自分に届く。


支えている手の大きさと暖かさがとても心地良くて
段々と意識が朦朧として来る。

その薄れ行く意識の中、
俺の耳元で

「この俺が傍にいる。
だから安心するが良い。」

という声がした。



孤独しか知らない時に彼女に出逢った。
いつしかそれが普通で孤独を忘れていった。
いざ孤独に出会うと心が叫ぶ。


心を守ってくれたのは貴方でした。



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