――君は彼の事をどう思っているんだい?――

彼はふと思ったから口にした些細な事だった筈だろうけど
俺の心に小さな波紋を生んだ。

その波紋はいずれ肥大し大きな波となる。



「くくっ、あははははは。楽しみだなぁ楽しみだなぁ楽しみだなぁ……

さぁ、シズちゃん
俺を楽しませてね」


企み


池袋某日


平和島静雄は何かを感じた。
その感覚がなんなのかなんて具体的な事は何もわからない。唯一わかる事と言えばそれが自分にとって不利益を生じるものだと言うことだ。


だが、自分に不利益をもたらす存在など分かりきっている事だと結論付け、その存在の事を考えてしまった事に少々苛立って、
―見付けたら殴るだけじゃ終わらせねぇ―
と決意し、不利益について考えるのを止めてしまった。


   ―それが間違いとも知らずに― 



一方、その不利益をもたらすであろう存在、折原臨也は鼻歌を歌い、スキップでもするような軽やかな歩きで池袋の街にいた。
目的など彼以外にない。
目を惹く金髪にバーテン服。池袋最強の喧嘩人形と謳われ、自身を見たらコンビニのゴミ箱はおろか自動販売機までもを投げてくる彼。

こうして自身が池袋を歩けば何故か分かって追い掛けてくる存在。
彼の存在を思い出して口元を歪ませる。





そうして暫く歩いた頃だろうか……
自分が先程までいた場所にゴミ箱が降って来たではないか。

―やっと来たのか、遅いよシズちゃん―

「いーざーやーくーん
池袋には来るなって何度言ったら分かるんだ」

毎度お馴染みの言葉と同時に現れた彼。

「やぁ、シズちゃん
今日は遅かったんだね、待ちくたびれちゃったよ」

「ふざけるな、後その呼び方は止めろって言ったよなぁ」

「俺はいつでも真面目で本気だよ。それにシズちゃんはシズちゃんだよ」

いつも通りのやり取り。
彼が臨也の胸ぐらを掴み殴る為に手を振り上げる。

―シズちゃんってば、単純なんだから―

彼に気付かれないぐらい微妙だが彼は口元を歪ませる。
そして手に隠し持っていた注射器を彼の首に思いっ切り挿す。
勢いよく挿したせいか彼の首からは出血する。
彼がそれを気にせずに振り上げた手を降ろそうとするが薬が効いたのか身体から力が抜け出して倒れていく。
倒れ朦朧とする意識の中でも臨也を睨む彼。
遂にその瞳が閉じたとき、

「あは、ははははははは
やったよ、遂に手に入れたよシズちゃん。
あはははははは……」

折原臨也は歪んだ表情でワラッタ




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