どうして俺よりも悲惨な人生なのに、俺が欲しいものを全て持っているんだ。

どうして呪われた運命の俺を羨むんだ。俺よりも幸せな筈なのに。


首を絞められた。俺と同等の力を持つ彼の力なら抵抗しない俺など、すぐに殺せる筈だろう。


首を絞めた。俺とは違い自分の力を制御出来るコイツはどうして抵抗しないのだろうか。

「抵抗、しないのか……?」

「抵抗、してほしいのか?」

力を制御出来ない俺にはコイツの存在が眩しくて羨ましい。俺はコイツよりも長い時間生きているのに、今だ自分を信じられない。

生きる為に力を制御しざるを得なかった俺には感情のまま力を奮える彼が酷く羨ましい。俺は幼い頃から自分が許せないのに。

「どうして、泣いてんだよ」

「どうして、泣かないんだ」

コイツの頬に雫が落ちる。一滴、また一滴と雫は流れる。まるでコイツが泣いているみたいだ。

俺の頬に彼の涙が落ちる。一滴、また一滴と雫は落ちてきて、まるで俺が泣いているみたいで。

「お前は泣けるのか。」

「お前は泣けないのか。」

泣けないコイツの代わりに俺が泣こう。コイツは羨ましいけど泣けないなんて悲しい。

泣いている彼が俺の代わりに泣いている。彼は俺が泣けないことを泣いている。


だから


コイツと一緒に俺が泣こうと思った。

俺と一緒に居て泣いて貰おうと思った。


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