――さぁ、跪づけ――


昔々あるところに黄の国という、とても大きな国がありました。
しかし、その国はどんなに土地に恵まれていても国民の生活は豊かにはなりません。

国には悪逆非道と噂される王様がいるからです。

絢爛豪華な調度品、顔のよく似た召使、毛並みの整えられた愛馬。
豪華な物、素晴らしい物、それら全てが彼の物になります。

国のお金が無くなりそうになれば、税を上げる。
それに反発し、王様に逆らう者は全て粛清されます。

そうして、王様は黄の国の頂点として傲慢に君臨しておりました。


悪逆非道な王様には婚約者が存在していました。
海の向こう国の青い人。
王様はその人に深い憧れを抱いていたそうです。

しかし、青い人は隣の国の赤い子を深く愛し、王様の婚約を破棄してしまいます。
王様は嘆き、深く深く悲しみました。
何故自分ではなく、赤い子なのかと嘆き、見たこともない赤い子への恨みが募ります。


そうして、その恨みが頂点に達し、ある日王様は大臣を呼び出して静かに、しかし狂っている声で

「赤い国を滅ぼしなさい」

と、残酷な命令を下します。


王様の命令により、赤い国の家が焼き払われ、幾多の命が消えていきました。
黄の国の兵隊さんも逃げ惑う人を斬りたくは無いと願っても王様の命令によって苦しみながら斬りました。

ですが、そんな人々の苦しみや嘆きの声は王様には届かずに、王様は

「あぁ、おやつの時間か」

と召使の作るおやつを口にします。


悪の王様を倒すべく、遂に人々は立ち上がりました。
戦いを知らない人々をまとめたのは大きな鎌を武器とする勇敢な女性でした。

今までの暴虐の恨みは積もりに積もりっていたので黄の国は国全体が戦いとなります。

いくら戦いを知らなかった人々でも、長年の戦で疲れきった兵士を倒すことは簡単に出来ました。
兵士は王様の指示に従うことに疑問を感じて戦う意志を持たなかったからです。

そして王宮は囲まれ、王様に頭の上がらなかった家臣達は逃げ出します。
王様の傍には、顔の良く似た召使だけ。

しかし、召使も逃げ出し王様は捕まりました。

王様が捕まり、人々は漸く戦いが終わるのだと確信しました。



人々が国をある程度立て直したある日、遂に王様が処刑される日です。

人々は自分達を苦しめていた王様がどのような姿で、どのように処刑されるのか気になって仕方がありません。


そうして教会の鐘が三つ鳴り響きます。綺麗な黄色の髪を持つ王様の処刑の時間です。
処刑人が王様の最後の言葉を聞きますが王様は人々に目もくれず言います。

「あぁ、おやつの時間か」





王様の命は散りました。
後の人々は王様のやったことを忘れないように彼を「悪ノ王」と語ります。


そして黄の国は平和になりました。


――黄の国童話『悪ノ王』――



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