しねばいい

それが口癖。


言う対象はノミ蟲だったりそこらへんのムカツクヤローだったりと色々。
しかし、自分が一番言う相手はやはり自分自身なんだろう。


どうして俺はこんな力を持っている

どうして俺はすぐキレてしまう

どうして俺は自分の力を制御出来ない


俺自身が化け物と呼ばれる一因となっている疑問。
疑問といっても答えが存在するわけもない。



俺はいつまで化け物なんだろう

俺は幸せになれるんだろうか

答えが無い質問の繰り返し。
でも聞かずにはいられない。



「静雄さん?」

急に声をかけられる。

俺に声をかけるなんて珍しいなと自嘲。

声をかけたのは

「竜ヶ峰、だったか?」

「そうですよ。」

大人しそうな少年だった。

「静雄さんは何をしていたんですか?」

「俺、は………俺自身について考えていた。」

何故話そうと思ったのか、それは俺にもわからないが素直に出た言葉。

「静雄さん、自身?」

わかっていないのだろう。言葉がオウム返し。

「あぁ、俺は後どれくらい力を振るって、どれくらい後悔して、どれくらい死を望むんだろう、と思っていた……」


しねばいい

宿敵に言っていても自分に返り、自分自身にしか言っていないように錯覚する言葉。

「え、」

いつの間にか自身の頬を滑る水滴。
何故流れるのかわからなくて、どうしたら止まるのかもわからない。

ぺろ

頬に感じた生暖かいもの。

彼が舐めた俺の頬。

「涙、止まりましたか?」

笑いながら言うこいつ。
自分がしたことなど気にもしていない。

だが、涙は止まっていた。


「あ、ありがとうな。聞いてくれて」

少々違和感は残るものの、慰めてくれたのだろうと結論付け、素直に礼を言う。


彼は何か企んだような笑みで告げる。


「また、いつでも涙を止めてあげますからね」



何処か喜んでいる自分がいた。







8/31 執筆
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