俺は一目惚れをした。
その娘は金色の長髪をなびかせ来良のセーラー服を着こなし細身なのに長身で
すらりと覗く足が魅力的だ。
その娘は確かに来良の制服を着ているが俺は見たことが無かった。
この俺、紀田正臣が見たことがない美人は珍しい。
かといって、その美人を放っておこうという思考は存在しなかった。






「そこのあなた!俺とお茶にでもいきませんか?俺、美味しいケーキ屋を知っているんですけど」

かなりの至近距離で話掛けた為に彼女はすぐに正臣の方に気付き振り向く。

正臣は彼女を見た瞬間に
この場にいることを感謝する。
彼女はそれほどまでに美しく周りを魅了する。

「……お、俺の事なのか?」

心地良い声が紡がれる。
紀田正臣は何処かで聞いた事のある声だったのだと思い、彼女をもう一度良く見ると……

彼、紀田正臣が現在憧れているが何処か近寄りがたい
「平和島、静雄…?」
その人だった。

「お、俺を知っているのか、てめぇも俺に喧嘩を売りに来たのか!!
俺は喧嘩が嫌いだと言ってるじゃねえか!」

正臣は慌ててキレそうな雰囲気の彼に喧嘩ではないと言い落ち着かせる。

しかし紀田の脳髄に刻まれている平和島静雄とは違い若干身長が低い。
別人か、と淡い期待を抱いてみるが先程彼女が言った言葉を思い出し崩れる。

「静雄さん、何でそんな格好なんです…か?」

とりあえず目の前の人物を憧れの人物と割り切り
紀田正臣が彼に話し掛ける要因となった疑問を口に出してみる。

「…来神の学祭でクラスの奴等に着せられたんだ。
ノミ蟲野郎も企んでいたらしく今日学校に行ったらいきなり…」

初めはぐったりした様子を見せていたが段々と宿敵の彼を思い出して殺気が沸いて来た様子を見せる。

そんな様子の彼を見て正臣は慌て落ち着かせようとするるが彼、平和島静雄の格好に見惚れてしまう。

だが、

「えっと、静雄さん……今高校生なんすか?」

……学祭……今の静雄には関係ないよな、えっと……

正臣が今の彼の矛盾に納得しつつもまだ疑問に残る事があった。

「あぁ高1だ。」

え、

正臣の中で今の彼の言葉がぐるぐると回る。

え、えええ、
俺と同じな訳がない

「なんで、高校生…なんですか…」

そういった疑問から
素直に言葉が出てしまう


「なんで、って言われてもなぁ……俺も学校からいきなり街にいて……」

不意に見せる不安そうな顔。
そんな顔を見たのは初めてで、街で見かける顔とは違う印象が伺えた。


この人は人に弱みを見せない人だった
それを前に俺は知って
この人に惹かれたんだ―


自重気味に笑いだして
高校生でも大人でも静雄は静雄だなという思いと共に愛しさが込み上げて来る。
そして彼の年齢は気にならなくなる。


正臣がいきなり笑いだしたのを心配してか、覗き込むような体制をしている彼に正臣は告げる。

「じゃあ静雄さん、一緒にサボりましょうか。俺がエスコートしますよ」

「何でだΣ大体俺は男だぞ!」

「え〜今は女の子の格好じゃないですか」

「っ、……」

「じゃあ行きましょうか。俺美味しいクレープ屋知っているので食べに行きましょうか」

「く、クレープ…………行く。」


彼はどんなに格好が変わっても彼なのだと
正臣は実感し、更に彼への愛しさが増す。

そして彼等は街を歩くのだった。





8/11 更新
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