陰る陽が早くなって風が冷たくて道端は落ち葉で埋め尽くされていて右手に感じる彼の手が暖かくて、冬だなあと実感していた。
買い物袋を持つ左手がかじかむのも。風邪をひくとうるさいから無理矢理に借された彼のブルゾンも。自分より厚着なのにくしゃみをする彼も。

「…人のくしゃみ見て笑ってんじゃねーよ」

バツが悪そうに鼻をすすって彼が僕を睨んだ。鼻の頭が赤い。

「笑ってないよ」
「俺にはわかんだよ、ばぁか」

即座に返答されて僕は少し驚く。
バレた?と小さく笑うと、
何年ツルんでっと思ってんだ。とまた睨まれた。鼻の頭はやっぱり赤いままで。彼はまた鼻をすする。少し拗ねたような子供じみたその様子がちょっとかわいい。
僕は彼の頬にキスを落とした。
すると彼は鼻だけでなく頬やら耳まで赤くしてしまって、道端の落葉よりも陰る夕日よりもそれはあまりにも赤くて、

「…笑ってんじゃねーよ」

今度はおかしくてとても「笑ってないよ」とは言えなかった。
彼が乱暴に買い物袋をぶつけてきて、僕は珍しく声を出して笑った。




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