指先、首筋、耳頬額唇。
熱が集まる。ちりっとした痺れが走る。魚みたいにパクパクと開きそうになる口元を空いてる手のひらで俺は必死に覆っていた。その様を眺めるこいつの丸い目と言ったら、ああ今すぐ殴ってやりたい。
俺の身体中をまさぐり舌を這わせ吸い付くレッドは何とも楽しげだった。この行為だけにどれ程時間を費やすのだろうか。触られた部分が一つ一つ熱い。変な感じ。熱が離れない。このまま溶けたらどうしてくれんだ馬鹿レッド。

「じゃあ小瓶にでも積めて、僕が全部貰ってあげるよ」

嫌だね。
そんな狭そうなものに俺の器が収まるかってんだ。お前に持ち歩かれてなんかたまるか。
悪態をつく俺をレッドは上目で眺めて俺の鎖骨に噛み付いた。
微かな痛みに目をぎゅっとつぶる。また魚になってしまう。隠さなければ。でも、頼みの手のひらはレッドによって自由を奪われていた。両の腕は手首に戒め。レッドの手が絡み付く。そんな細っこい身体のどこにこんな力があると言うのか。

「ぁ、い、やだ」

自分でも耳を疑う位情けない声が口から漏れた。今度は自発的に顔中に熱が集まる。なんだこれ。こんなの。俺は下唇を噛み締めて声を殺した。いやいやと頭を振って現状から目をそらした。言葉の通り目は開けられなかった。
左の手首の圧力が消えると同時に顎が捕らえられ、痛いほどの力で静止を余儀なくされる。思わず目を開けるとレッドの両の目とかち合った。

「いいね。たまんない」

ガキの頃、雨上がりにでっかい虹を見たことを思い出した。隣にはこいつが居て、馬鹿みたいにはしゃぐ俺を余所に黙ってそれを眺めていて、でもその瞳は誰よりも熱を帯びていた。
それを今、こんな形で見るなんて。この目もあの目と同じ。俺の清純なるガキの思い出がまさかこんな形。こうなったレッドはもう止めようがない。
俺が有無を言う前にその唇はレッドに塞がれ、言葉を形成するであろう舌はレッドに絡み取られていた。




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