レッドは眠りが深い。
小さな頃からそうだ。少し成長してからもそうで、現に今だってそうだ。オレの部屋の窓からリザードンで登場したレッドは開口一番、
「ねむい」
とだけ言ってベッドに倒れ込んだ。オレを抱き込む形で。
オレが押さえつけられながらいくら不満を述べようと相変わらずレッドはマイペースで「あと5分」とかお決まりのセリフをむにゃむにゃと言って、オレの首筋に鼻先を埋め込んで穏やかに寝息を立て始めるのであった。こうなったレッドへの対処法は、皆無。文字通り時の流れに身を任せるしかない。オレはレッドの黒髪をさらりと撫でて小さくため息をついた。
今日が休みで良かった。でもみんなの毛繕いはしてやりたいな。
窓から差し込む太陽にぼんやりと思考する。もうじき昼時。腹が減ればレッドは起きる。

器用に首を軽く傾けると安らかなレッドの顔があった。寝息と髪の毛が首やら頬やらむずかゆく触れる。自分たちがどういう関係かわかっているのだろうか。オレだって男であり、好きな奴がこんなに無防備にしかもこんなに密着してという状況で我慢できる程できた人間じゃないのである。だからといって寝込みを襲うような度胸もないのだけれど。
せめてもの攻撃としてオレはレッドの耳に息をふきかけて言葉を添える。

「襲うぞ、ばか」

ん、とレッドが小さく身じろくものだからオレは慌てて身体を反転させ背を向けた。言ってからなんだが、すごく恥ずかしい。
でも次に耳を襲った刺激にオレは更に後悔をする。
ふっと空気が入り込んだかと思うと粘着質な感覚がべたりとまとわりついて、多分というか絶対、舌。

「じゃあ犯すよ、あほ」

レッドは眠りが深いとか言ったのはどこのどいつだ。寝起きでこんな爛々としたこいつ、オレは知らねえ。
ぐいっと腕を引かれて組み敷かれる形になるのは一瞬の出来事だった。

「お腹空いたから起きてたんだけど、まさかのサプライズ」

レッドがぺろりと舌なめずりをする。オレはぞくりと背筋を凍らせる。今日はいい天気で休みで毛繕いとか買い物とかトレーニングとかやりたいことが山ほどある訳で、だからそのこんな展開は想定外中の想定外で、
レッドはオレの盛大な独り言を一蹴してこの上なく幸せそうに笑った。




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