目を開けるとレッドが居た。
それも至近距離。

「―ッ!!」

声をあげようにもあげられなかったのは無理矢理塞がれたからである。唇で、というロマンチックな事態は起こらず物騒にも手のひらで力強く封じられてしまった。
レッドは空いている方の人差し指を自らの唇にすっとあてて微笑む。

「黙って」

自分の頬が紅潮するのが分かって恥ずかしい。そんなこっぱずかしい動作を何ともなしにこなすこいつはもっと恥ずかしい。この無自覚男前が。
俺が首を縦に振ると満足気にレッドは笑う。風が吹いて黒の髪がさらと揺れて、額にはキスをひとつ落とされて、ふわりと奴の匂いが、

てか、風?

後付けで申し訳ないことこの上ないが説明すると、ここはトキワジムの一室イコール俺の休憩アンド作業部屋。只今ふかふかソファで絶賛お昼寝中、だったさっきまで。まだ窓を開けっ放すような季節ではない。開けっ放して寝るという物騒なこともしない。そして現状、見るからに綺麗に開放されている。次によくよく見ると床が微妙に汚れている。土か草か外の何か。更によくよくみると俺に跨るレッドは靴を履いたままである。
開け放たれた窓、汚れた床、土足のコイツ。全てを統合し推理した結論、

「不法侵にゅっ―!!」

行き着いた罪名を述べる最中また口を塞がれる、今度はそれこそその唇で。変な感じで言葉が切れたじゃねぇか恥ずかしい。舌絡めんな音たてんなああもうお前。
数分後、満足したであろうレッドが唇を離しこう宣う。

「なんかさ、窓から逢瀬ってちょっと素敵だよね」

じゃない?
おいおい同意求めんな自由人。





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