散華





桜が舞っている。





体中が痛い。






私を抱き寄せながら、泣いている人がいる。




ああ、泣かないで。



その涙を拭ってあげたいのに、腕が上がらない。




夕焼けを背景に、あなたは私に口づけをした。



ああ、あなたの口が私の血で染まってしまう。




あなたの涙が私の頬に落ちた。


冷たいとも、温かいとも、感じ取れない。



ただ、桜の良い香りだけが分かった。


こんな感覚の無い体で感じることができたこの香りは幻なのかもしれない。





もう、前が見えなくなってきている。



このまま目を閉じてしまえばもうあなたを見ることができないかもしれない。


息も絶え絶えで、私はもうすぐ死ぬんだと、他人事のように思っていた。






最後に、綺麗な姿をあなたの目に留めたいと願って、あなたに笑顔を見せた。



あなたは酷く歪んだ顔で、今にも大泣きしそうな顔で、辛そうに笑い返してくれた。





最後にあなたの顔を見れて、あなたの腕で死ねて、私は幸せだ。








好きです。

大好きです。



ああ、この声が聴こえますか。

あなたを想う声が。





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